日々の暮らしのなかに溶け込む身近さと、伝統的な手技で生み出される繊細な美しさが魅力の伝統工芸品。岡山県は備前・美作の地に受け継がれる代表的な伝統工芸品の特徴と、その伝統工芸品に触れることができるイベント・飲食店を紹介します。
岡山市
烏城彫
豊かさを人の心につたえる漆工芸品
岡山の象徴ともいえる岡山城は、漆黒の外観から別名「烏城(うじょう)」とも呼ばれています。その異名を名に冠した「烏城彫」は、全工程手作業で、彫刻、漆塗りを行い、日本産生漆を何度も丹念に塗り重ねて仕上げられます。
大正14年(1925)創始の、岡山県を代表する特産品として、岡山県内の多くの家庭で気軽に愛用されてきた「烏城彫」。なじみ深い丸盆や角盆を中心に、コーヒートレイ、小物入れなども作られています。栃(トチ)・欅(ケヤキ)・桂・桐材など国産天然木の木目を活かしながら、野菜や果物、花、岡山藩の家紋(備前蝶)などの模様を彫刻し、色漆で着色。さらに日本産の生漆を塗っては布で拭き取る「ふき漆」という作業を、13~24回も繰り返して作られます。
関連リンク
備前市
備前焼
自然と人との共同作業が
作り出す魅力
備前焼は、古墳時代の須恵器(すえき)の製法が次第に変化したもので、平安時代に熊山のふもとで生活用器の碗・皿・盤や瓦など、生産されたのがその始まりといわれています。備前市で採取される良質の陶土で一点づつ成形し、乾燥させたのち、絵付けもせず釉薬も使わずそのまま焼いたもので、土味がよく表れている焼き物です。
焼き味の景色は、胡麻・棧切り・緋襷・牡丹餅などの変化に富んでいますが、それらは作品の詰め方や燃料である松割木の焚き方などの工夫と、千数百度の炎の力によって七~十昼夜かけてじっくり焼き締めた硬質の炻器(せっき)が備前焼です。一点として同じ形も焼き味も無いと言えます。
平成29年4月に、「きっと恋する六古窯―日本生まれ日本育ちのやきもの産地―」として日本遺産に認定されました。
関連リンク
真庭市
郷原漆器
自然の風合いをそのままに
受け継がれる伝統の美
岡山県北に豊かな自然を描く蒜山高原。その郷原という集落に生まれた普段使いの器が「郷原漆器」です。蒜山に育つ木々を使い、ヤマグリを生木のまま輪切りにして形成し、漆林から採取した漆で塗り上げるという約600年続いてきた手仕事で作られています。
伝統は昭和20年を境に一旦途絶えますが、平成元年から復興が始まり、美しい木目が魅力の漆器として甦りました。