瀬戸内国際芸術祭で巡りたい、犬島・豊島の旅

岡山駅から
京橋クルーズ乗り場へ
岡山駅から瀬戸内の島々を巡る1日のアートトリップが始まります。京橋クルーズ乗り場へは、路面電車の移動がおすすめ。「城下」の電停まで行けば、そこから徒歩でもアクセス可能。旭川沿いの風情ある町並みや京橋朝市の会場を楽しみながらのんびり移動できます。周辺にはカフェやベーカリーも点在し、寄り道も旅の楽しみになります。
京橋クルーズの乗り場は、旭川のほとりにひっそりとたたずむ港。京橋朝市開催日には地元の人や観光客でにぎわい、活気あふれる雰囲気に包まれます。乗り場受付でチケットを入手し、さっそく乗船。乗船後には、乗船中の注意事項の説明を受け、9時40分に出航します。スタッフの方々の案内も丁寧で安心感がありました。
船からの景色も
楽しみの一つ
船が港を離れると、ゆったりとした旭川の水面が広がり、岡山市街や後楽園方面の眺めが一望できます。京橋、桜橋、旭川大橋などの大きな橋の下をくぐり、やがて瀬戸内海へと出れば、点在する島々や凪いだ海といった多彩な表情の風景が楽しめます。海風とともに、ゆっくりとした時間が流れはじめました。
犬島チケットセンター
写真:井上嘉和
1時間ほど船に揺られると、大きな岩々と犬島の港が近づいてきます。船からおりると、黒い外壁の犬島チケットセンターがすぐ目の前に。犬島チケットセンターで美術館のチケットを購入し、さっそく徒歩で「犬島精練所美術館」へ向かいます。道中にふと振り向けば、海と空と野花の咲く小道が何とも絵になる景色でした。
犬島のアートを
堪能する
犬島精錬所美術館
写真:阿野太一
明治時代の銅精錬所跡を活用した「犬島精練所美術館」は、産業遺構と現代アートが融合する圧巻の空間。建築家・三分一博志とアーティスト・柳幸典による独創的な設計は、自然に吹く風を利用した空調設備を持ち、サステナブルな展示空間としても注目されています。約100年前まで実際に稼働していた精錬所の重厚感や、ここだけ時が止まっているような退廃的な美しさなど、様々な感覚が交差する場でした。
犬島には美術館以外にも、アート作品が点在しています。空き家を活用したプロジェクトでは、家そのものがインスタレーション作品となり、暮らしとアートが交錯。作品ごとに展示場所が異なり、路地裏を歩くような感覚でアートを探す楽しさがあります。チケットセンター併設のカフェから外を眺めると、景色もアート作品さながら。まさに「島全体が美術館」でした。
カフェスタンドくるり
犬島散策の途中でぜひ立ち寄りたいのが「カフェスタンドくるり」。小さなカフェスペースは、木のぬくもりと手づくり感にあふれ、島時間に寄り添う優しい雰囲気が魅力です。冷たいドリンクや焼き菓子が人気で、歩き疲れた体を癒してくれます。島特有のゆっくり流れる時間を味わいたい方に最適のカフェです。
ここでは、地元の素材を使ったドリンクや、季節限定のスイーツを提供。なかでも自家製の手作りアイスクリームが人気で、春は八重桜・イチゴ、初夏はベリー系・すもも、冬は柑橘類と、季節に応じて犬島の果実をふんだんに使っています。アート鑑賞の合間に、ここでしか味わえないグルメを楽しむのも旅の醍醐味です。
充実した
移動時間を
犬島を出発して、次は豊島へ。フェリーはゆったりと島々を縫うように進み、穏やかな海と島影が美しい瀬戸内海らしい景色が続きます。船内でくつろぐもよし。甲板に出て潮風を浴びるもよし。(甲板に出る場合は、必ずライフジャケットを着用してください。)船旅でしか見ることのできない景色が、旅の非日常感をさらに引き立ててくれます。
豊島・唐櫃港に到着したら、まずは港すぐのレンタサイクル店へ。島内は坂道も多いため、電動アシスト付き自転車のレンタルがおすすめです。豊島美術館の前には自転車の駐輪スペースが用意されています。アート作品の多くは点在しているので、自転車があると移動が格段に楽になります。海沿いや棚田を走ると、風景も爽快。豊島の自然を全身で楽しむことができました。
豊島でアートと
ひとつになる体験を
豊島美術館
写真:鈴木研一
豊島を代表する「豊島美術館」は、建築家・西沢立衛とアーティスト・内藤礼による唯一無二の空間。水滴のようなドーム型の建築の中では、静かに湧き出る水や、風の流れ、陽の光を感じられる、神秘的な空間が広がっています。自然とアートと自分が一体化するような感覚を体験でき、時間を忘れ、何時間でもたたずんでいたくなる美術館です。
豊島美術館の敷地内にある「カフェ&ショップ」では、館内の静寂と余韻をそのままに、豊かな自然を望みながらゆったり過ごすことができます。地元食材を使ったドリンクや軽食、スイーツが楽しめ、アート鑑賞後の休憩にぴったり。美術館の世界観を反映したシンプルで洗練された空間で、心も身体もリセットされるようなひとときを味わえます。
豊島を後にして
京橋へ帰港
豊島でのアート巡りを終えたら、再び船に乗り、犬島を経由して京橋港へ。季節によっては、夕暮れに染まる海の景色を楽しむことができ、アート体験で高揚した心を穏やかにしてくれます。帰りの船が京橋へ帰港するのは17時過ぎ。静かに流れる時間の中で、1日のアート体験を思い返しながら帰路につけば、船の旅ならではの余韻に浸ることができます。
岡山から気軽に出発でき、アートと自然に包まれる1日が過ごせる京橋クルーズ。岡山駅からのアクセスも良好で、移動時間も充実すること間違いなしです。加えて、犬島と豊島の2島を一気に楽しむことができ、瀬戸内旅行が初めての方にもぴったり。瀬戸内国際芸術祭の期間には、少しだけ日常を離れて、海とアートに抱かれる旅へ出かけてみませんか?