活動ベースは岡南飛行場 “魅せる”エアショーで小型飛行機の魅力を届ける

活動ベースは岡南飛行場 “魅せる”エアショーで小型飛行機の魅力を届ける
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「万博に行ってきた!」。上空からのまさかのアングルで撮影された大阪・関西万博の写真とコメントはSNS上で大バズり。投稿したのは、岡山市南区の岡南(こうなん)飛行場をベースに活動しているウイスキーパパ競技曲技飛行チームのチームオーナーパイロットの内海昌浩さんです。日本各地のエアショーで飛び続ける理由や、岡南飛行場をベースに活動するわけを聞きました。(トップ写真提供:内海昌浩さん)

掲載日:2025年10月23日

ライター:観光ライター 頼實

日本の空を軽やかに飛ぶ「エクストラEA300L」

取材の待ち合わせは活動ベースの岡南飛行場です。午後3時ごろ、準備を終えた内海さんが駐機場に現れました。
機体は、青と黄色の美しいツートンカラーが目を引くドイツ製「エクストラEA300L」。エンジンがかかってからも、内海さん自ら操縦系統などを念入りにチェックしていきます。現在、同じ機体が世界中の空を飛んでいますが、日本には5機程度しかないといいます(トップ写真:赤塚聡さん)。

滑走路へゆっくりと向かって、いよいよテイクオフ。この日は離陸の瞬間にスモークを数回噴射するサービスがあり、展望デッキにいたギャラリーから歓声が上がりました。急角度で上昇し、そのまま旋回して、訓練飛行エリアがある犬島方面へと見えなくなりました。「まさに、軽業師のような身のこなし」という印象でした。この日は見ることができませんでしたが、内海さんのショーでは、宙返りやきりもみといった、ド迫力の演技が楽しめます。

日本人初で唯一!エアショーライセンス無制限クラスのパイロット

特別な許可を得て、訓練飛行の後に機体の近くで説明を受けることができました。
内海さんは、アメリカ連邦航空局(FAA)のエアショーライセンスの最高位を保有する日本人初にして唯一のパイロットです。どれだけ凄いかというと、4段階あるエアショーの高度の中の最高位であるレベル1(Surface(表面)/無制限)という驚異的な内容。内海さんは、2008年と2012年に世界選手権に出場し、2009年ごろから日本のエアショーで飛び始めました。

操縦席は航空法で必須な航空計器だけを搭載し、軽量化を徹底しています。
エアショーのシークエンスカード(演目の手順表)を見せてもらいました(写真は以前のカード)。レフト(左)、ライト(右)のマークや、注意事項が細かく書き込まれています。このメモを操縦席からよく見える場所に置いて、繰り返し練習します。
地上スレスレの場所での曲技飛行は怖くないですか、と尋ねると「高い所で精確に高度を保って実施できるまで練習します。同じことをする限り、下に行く可能性がないので怖くはありません」と内海さん。笑顔の下にある内海さんのストイックさを垣間見ることができました。

空に魅せられて、飛行機に憧れた少年時代

内海さんが空に魅せられたのは少年時代。千葉県から香川県に転校した小学生の頃、元海軍のパイロットだったという近所のお年寄りから空の話を聞いて育ちました。「松山から三重に行く途中、雲の中で迷子になった話などを聴いて、『日本にもこんな冒険があったのか』と思いました」。大学時代から渡米訓練を繰り返し1996年、自家用免許を取得。その後も日本で仕事をしながら、暇さえあればアメリカに通い、米国の事業用免許やエアショーの資格を取得しました。

「昔は今よりも一般的に自家用機に乗る人が多く、小型飛行機がもっと身近な存在でした。岡南飛行場から和歌山県の白浜まで1時間程度で行けます。自家用車の感覚でセスナ機など小型飛行機に乗る人が増えて欲しいと思っています。そのためには、まずは知ってもらうことから。エアショーを見にきた人たちに、小型飛行機に興味を持ってもらいたいですね」(写真3点:赤塚聡さん)。

飛行訓練に条件が揃った岡南飛行場

「エクストラEA300L」の重量は約680キロと軽自動車並みです。大人2人で押せる軽さである一方、出力は300馬力(hp)というハイスペック。
セスナ機との違いを尋ねると「車に例えると、セスナ機は4、5人乗りで荷物も運べるファミリーカー。エクストラはレーシングカーといったところです」と内海さん。
長年、内海さんらチームが岡南飛行場を活動ベースにしてきた理由は、岡山の恵まれた気候条件に加えて、岡南飛行場に定期便がないことや民間訓練空域の充実を挙げます。

岡南飛行場は、1962年に岡山空港の名称で開港。1988年に現在の岡山空港(愛称・岡山桃太郎空港)ができるまで、東京や宮崎への定期旅客路線が就航する空の玄関口でした。
現在は、減少傾向にある小型飛行機用の航空ガソリンが補給できる飛行場として重宝され、中四国でも有数の貸切輸送や遊覧飛行、自家用機といった小型飛行機の拠点として活用されています。
「岡南飛行場では、年間約50人程度の方が小型機のライセンスを取得しています」と、管理事務所の平井圭一さんは話します。

「岡南飛行場祭り」で内海さんのエアショーも

迫力満点の内海さんによるエアショーを間近で感じられる絶好の機会があります。
毎年恒例の「岡南飛行場祭り」が11月16日(日)9:30〜15:30の日程で開催されます(入場無料)。内海さんも毎年エアーショーを行い、観客を魅了しています。
ウイスキーパパ競技曲技飛行チームのエアロバティック飛行は、11:00〜/13:50〜の2回(約15分間)です(変更の場合あり)。
岡山グライダークラブによるデモフライトやヘリコプターのデモフライトなどもあります。

そのほか、管制塔見学(当日受付・抽選)、岡山市消防航空隊による公開訓練、ヘリコプター体験搭乗(当日受付・抽選)、遊覧飛行(有料)、車両展示、航空教室(当日受付・先着順)など盛りだくさんです。
地元町内会の飲食コーナーや吹奏楽演奏なども。
会場内の駐車場は限りがあるため、できるだけ公共交通機関での来場が良さそうです。
秋空に映える美しい機体を操る、内海さんの華麗なショーを見てみたいですね。

岡山市公式観光情報 OKAYAMA KANKO.net