「岡山芸術交流」で、日常に融合するアートを味わう

「岡山芸術交流」で、日常に融合するアートを味わう
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アート 風景

2025年9月26日から11月24日まで、「岡山芸術交流2025 」が開催され、岡山の街が世界のアートで彩られます。これは、3年に一度、岡山市の中心部を舞台に開催される国際現代美術展です。第4回となる今回のタイトルは、「The Parks of Aomame(青豆の公園)」です。アーティスティック・ディレクターには、パリを拠点に活動するフィリップ・パレーノ氏を迎え、新たな視点と表現が融合した、独創的な世界を創り出します。

掲載日:2025年10月31日

ライター:観光ライター 杉原

岡山芸術交流2025
Okayama Art Summit

「岡山芸術交流」は、2016年に始まり、3年ごとに開催されている国際現代美術展です。その最大の特徴は、岡山市内の文化施設や街中の様々な空間を会場とし、街歩きをしながらアートを鑑賞できる「都市型アートイベント」である点です。従来の美術館のような限られた空間だけでなく、普段何気なく通り過ぎる場所に作品が展示されることで、街全体が展示会場へと変貌します。

「岡山芸術交流2025」では、最先端のコンセプチュアルアートが岡山市中心部に集結。世界中のアーティスト、音楽家、建築家、思想家などが集い、独自の表現を通して社会や公共について様々なメッセージを問いかけます。2025年も瀬戸内国際芸術祭の期間と重なり、地域全体がアートで盛り上がります。日常と非日常が交差する特別な岡山で、アートの旅に出かけましょう!

岡山ならではの展示

岡山芸術交流2025では、アーティストの島袋道浩氏が「好適環境水」を用いた作品「魔法の水」を展示しています。この作品では、通常では共存し得ないウミガメ、コイ、フグなどが同じ水槽で泳ぐという光景が実現しました。これは、好適環境水が持つ「海水魚と淡水魚がともに生きられる」という特性をいかしたものです。自然界のルールや境界を超越した生き物の共存を通して、鑑賞者に自然と人工の関係、そして異なるものが平和的に共存する世界の可能性について、深く思索するきっかけを与えます。

「好適環境水」は、岡山理科大学で開発された、魚の飼育に適した人工飼育水です。海水魚が生育するのに最低限必要なナトリウム、カリウム、カルシウムなどの成分を調整することで作られています。好適環境水は、海水魚と淡水魚が同時に生活できるということに加えて、成長促進や病気抑制といったメリットがあります。自然界では生活環境が分かれる魚たちを同じ水槽で飼育することを可能にし、陸上養殖の可能性を大きく広げてくれる「魔法の水」として注目を集めています。

広い空間を
活かしたアート

今回アーティスティック・ディレクターを務めるフィリップ・パレーノ氏の作品「Membrane(メンブレン)」は、展覧会のシンボル的な巨大立体作品です。高さ13.6メートルの塔状の作品で、AIとセンサーを搭載し、周辺の温度や湿度などの環境変化を捉えて、独自の言語で鑑賞者に語りかけます。機械の身体と人間の心を持つ存在をイメージして制作され、その「声」を俳優の石田ゆり子さんが担当。現実とフィクション、人工と有機が交錯する、パレーノ氏らしい知的な体験を提供します。

「岡山芸術交流2025」の主要会場の一つが、旧内山下小学校。岡山市の中心部、岡山城のほど近くに位置するこの歴史ある校舎は、使われなくなった学び舎ならではの独特な雰囲気が魅力です。校庭、プールといった空間が、現代アートの展示会場へと変貌します。過去の記憶が残る場所と、最先端の表現が融合することで、非日常的な空間が生まれます。学校という公共の場をアートを通じて再発見できる、重要なスポットです。

表町商店街のなかで
アートの一部になる

岡山市北区表町商店街(雷電館1F)に設置された「実存探偵社(岡山)」は、プレシャス・オコヨモン氏による参加型の作品です。ビルの空きスペースを、ヴィンテージ家具やゲスト自身のドローイングで構成された壁紙で飾り、精神分析医の相談室のような独特なオフィス風の空間に変貌させています。会期中の週末にのみ、「実存探偵」と呼ばれる白い衣装のパフォーマーが常駐し、来訪者と対話を行います。記憶、隠れた感情といったテーマについて尋ねることで、鑑賞者は自身に向き合う、ユニークな体験を得ることができます。

プレシャス・オコヨモン氏は、1993年ロンドン生まれ、ニューヨークを拠点に活動するナイジェリア系アメリカ人の詩人であり、アーティストです。詩や彫刻、インスタレーション、パフォーマンスなど多岐にわたる表現手法を用い、自然界、植民地主義、人種、そして親密さといったテーマを探求しています。特に鑑賞者との間に独特な関係性を築くのが特徴的で、対話や、平日の展示でのアンケート用紙からで得られた鑑賞者の回答が次回以降の作品制作に生かされるかもしれないというのも興味がわきます。

日常のなかの
非日常

「岡山芸術交流2025」では、岡山の街並みと世界最先端の現代アートが絶妙な均衡を保って融合していると感じました。予測不可能かつ、解釈次第で新たな可能性を生み出すことができる沢山のアートが、訪れる私たちを待っています。また、ライアン・ガンダー氏の「The Find(発見)」は、街中に置かれたコインを探す作品で、見つけた人は拾って持ち帰ることができます。コインを探しながら街の散策をすることで、いつもの街が違って見えてくるかもしれません。入場無料の作品鑑賞を通じ、子どもから大人まで、誰もが気軽に街を散策しながら芸術の秋を味わえます。ぜひ岡山市へ足を運び、特別なアート体験を心ゆくまでお楽しみください。

岡山市公式観光情報 OKAYAMA KANKO.net