大正ロマンを代表する竹久夢二とは?
岡山後楽園のそばにある「夢二郷土美術館」。そのはじまりは1951年初代館長の松田基(当時両備バス社長)さんが大阪駅構内の古本屋で夢二の作品「加茂川」と「女」に出会い、作品のコレクションをはじめたことがきっかけです。
そのきっかけとなった作品の一つ「加茂川」がこちら。京都の加茂川のほとりに佇む舞妓と思われる女性の美しい後ろ姿を、京都の街並みを背景として描いたとても印象的な作品です。初代館長は夢二の里帰りを念じコレクションを増やし1966年に両備バスが始まったゆかりの地の西大寺で夢二郷土美術館を創設したのち、1984年に夢二生誕100年を記念して、現在の場所に美術館本館を開館しました。
明治17年に岡山に生まれた夢二は16歳まで岡山で過ごします。18歳で上京して以降その才能を認められ、児童雑誌や詩文の挿絵、文筆家としても文、詩、歌謡、童話など創作しています。また、多くの書籍の装丁、広告宣伝物、日用雑貨などそのマルチな才能で近代日本のグラフィックデザインに多大なる貢献をしました。
夢二自身が大衆の人々の普遍的な感情に寄り添う人であり、その人柄が作品に写し出され現在も多くの人の心を掴んでいます。それはきっと今を生きる人々も共感できるほど、親しみやすく身近なテーマを描いているからです。展示室入り口に、当時の夢二の友人が撮影したとされる夢二のアーティスト写真がかなり印象的で、思わず見惚れてしまいます。
肉筆の屏風画を含む、掛け軸、油彩画、水彩画、スケッチ、木版画や夢二著作の本や装丁した本、手紙など、約3000点のコレクションがあります。その中から年に約4回、企画展を開催し、常時100点以上の夢二作品を展示しています。
ガラスの向こうの展示作品は全て畳の上に展示されています。
美術館で工夫されているのが、椅子に座って対面の展示を見た時に正座をして見た高さで作品を見ることができるということです。このことによってより作品に親近感を抱くような気持ちになります。
2016年のある日、美術館の職員さんが出勤途中に車にひかれそうになった仔猫を見つけ保護したことがきっかけで美術館にひきとられた「黑の助」。夢二の描いた猫がまとめられた豆本「猫」の中の黒猫にそっくりだということで、今では看板猫として活躍しています。なんとも運命的な出会い!出勤日は公式インスタグラムでチェックしてください。本当に絵の中から飛び出してきたみたいです。
J Rの多くの車両デザインを手掛ける岡山県出身で工業デザイナーの水戸岡鋭氏が2017年にリニューアルデザインし、夢二とのコラボレーションしたカフェ&ショップ「art café 夢二」は第六展示室と呼ばれています。
テーブルなどの細かいデザインも二人の巨匠の作品の組み合わせでできています。
今回いただいたのは、「黒の助ガトーショコラセット(ドリンク付)。」黒の助をイメージしたチョコレートはとてもキュート。パティシエが一つずつ手づくりで作っています。ドリンクは高梁市の茶葉(やぶきた)を使用した「高梁紅茶」を選びました。マイルドな味わいの美術館オリジナルブレンドです。夢二も紅茶やハーブティーを好んで飲んだと言われており、美味しくいただきながら夢二に想いを馳せてみました。
カフェ内には手紙を書く席が設けられ、ショップで便箋や絵葉書を購入し、夢二になりきって大事な人や自分への手紙を書くのもおすすめです。
そのほかにも倉敷帆布の「タケヤリ」とのコラボレーションで作られたトートバッグや夢二がデザインした千代紙や帯の柄をモチーフにした風呂敷が人気です。
夢二は岡山を出てからも故郷に強い思いを持っていたそうです。そんな夢二の想いを形にしたのがまさに「夢二郷土美術館」。ぜひ、夢二づくしの世界を楽しんでみてください。