生産者の声から生まれた“岡山発”アイスクリームブレンダーに注目

生産者の声から生まれた“岡山発”アイスクリームブレンダーに注目
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岡山の農業機械製造・販売などを手掛ける「オカネツ工業」の地域感謝イベント「オカフェス2023」が4年ぶりに開催されました。耕運機など農業機械の会社かと思いきや、今注目なのは、凍らせた素材を高速で粉砕するアイスクリームブレンダー「BJ」。食品ロスなど生産者が抱える課題から誕生した岡山発のアイスクリームブレンダーの魅力に迫りました。

掲載日:2023年06月15日

ライター:観光ライター 頼實

ジェラート・アイス・シャーベットの3層!

BJの特徴は、凍らせた果物など素材を瞬時に粉砕、アイスクリームと混ぜることで、素材の味を生かしたオリジナルアイスクリームを簡単に作れるという点。素材が“不均等”に混ざる点も魅力の一つで、果肉がしっかりと残るシャーベットと、混ざりあったジェラートなど、味と食感のバラエティが一度で楽しめます。
オカフェスでもBJのブースは大人気。イチゴのアイスクリームを実際に食べてみました。
食べ進めていくと、最初はソフトでなめらかな口当たり、続いてフワフワの食感、最後にイチゴの果肉を感じられるシャーベットと3層の変化が。次々と味が変わっていく不思議な美味しさでした。

BJのモーターには、同社のミニ耕運機と同じ農業用のモーターが採用されています。ベルトを通して、スクリューが高速で回転、凍った素材を粉砕する仕組み。この粉砕力は農業機械メーカーならではの強みです。
BJ開発の裏側には、生産者が抱えていた規格外作物など廃棄ロス問題があります。
偶然、オカネツ工業の社員が生産者の抱えていた悩みを知り、6次産業化の後押しをしようと、アイスクリームブレンダーのベーシックモデルSF01を完成。2015年から販売を開始しました。

工場内を電動トレインに乗って見学

地域の人たちが多数訪れるオカフェスでは、AIなど先端技術を取り入れた農機具も披露されました。
子どもたちに人気だったのは電動式トレインです。普段は立ち入ることができない工場内の作業場などをトレインに乗りながらぐるりと見学できました。

進行方向の両側にはオカネツ工業の農機具がズラリとお出迎え。
運搬車や耕運機など農機具展示会場のようで、子どもだけでなく、大人もドキドキ。終点近くでは、大きなトランスミッションもお披露目されていました。

ものづくりの技術を間近で体感

写真の一番右側が、一度の充電で約40坪を連続作業できるほどのパワーがある電動のミニ耕運機「curvo(くるぼ)」。
この耕運機のモーターと同じものを、BJにも転用しているそう。
同社は今年で創業75周年。長年に渡って、農業機械で培ったものづくりの技術の粋が、新しい分野でも生かされていることが分かります。

オカフェス2023は、さまざまな屋台やランバイク体験、よしもとお笑いステージなど盛りだくさんでした。
オカフェスは今後、不定期で開催予定。子どもと参加すると楽しめますよ。

朝採れイチゴをアイスクリームに!

実際にBJを導入しているカフェやアイスクリーム店に話を聞きました。
朝採れ・完熟にこだわり、新鮮なイチゴのみを直売する「奥山いちご農園」は2017年、BJを導入してカフェ「奥山いちご農園plate」をオープンしました。
“本物の素材”の良さが引き出されたアイスクリームを使ったメニューは、たちまち大ヒット。いちごの最盛期の休日には、1日4〜500人もの来客があるという人気ぶりです。

これまで同園では、規格外のハネモノは泣く泣く廃棄していました。
「丹精込めて育てたいちごをなんとか生かしたいと考えていたところ、BJの試作に呼んでもらいました」と奥山礼子さん。
「もともと、いちごのアイスクリームといっても香料や色粉が入っているイメージであまり好きではなかったのですが、BJの試作を食べてみた時、いちご感が凄くて感動。家族を説得してカフェオープンを実現しました」と奥山さんは話します。

沖新田は干拓によってできた平野で、山がなく日照時間が長いことから、古くからいちごの生産地だったそう。しかし後継者不足などから、現在は数件にまで減少しました。
奥山いちご農園は、祖母の時代に始めたいちご農園を継いだ2代目で、現在は、礼子さんのご主人の茂樹さんが全部で7種類のいちごを栽培しています。

コンセプトは「いちごを摘んだ、その手で届ける」。茂樹さんがいちごの生産を、礼子さんと、娘の華帆さんがメニュー開発や加工、販売などを。かわいいいちごのロゴは、デザイナーの長男・太貴さんが担当したそう。
作り手の顔が見えるいちごは、そのままはもちろん、アイスクリームになっても、ギュッと美味しさが詰まった納得の味。
朝採れいちごを使ったメニューは、6月いっぱいで、夏季は、カキ氷メニューが登場します。

素材の組み合わせは無限大

畑でとれるアイスのお店「AOBA」は、BJで岡山産の野菜や果物を使ったアイスクリームを作る話題店です。
AOBAのメニューを見ていると、素材の組み合わせは自由自在で、レシピは無限大だということを感じます。

この日、作ってもらったのは「アスパラ」と「さくらんぼトマト」の2種。
アスパラは、岡山市北区御津の生産者「あっ!くんfarm」から。
「アスパラのアイス!?」と少し疑問に感じつつ、青臭さが少なく、ミルクアイスと相性の良いあっさりとした美味しさに驚き。なめらかな口当たりの虜になりました。
「生でかじっても美味しいアスパラです。蒸したアスパラを一度ペースト状にして冷凍しているので繊維も残りません」とAOBAの伊藤諒さん。売り切れの日も多いそうです。

もう一つは、岡山市南区西七区の「奥野農園」のさくらんぼトマトのアイス。
「皮が薄いので歯触りが良いのが特徴です。とても甘い品種のトマトなので、アイス向き。そのまま凍らせて使っています」
実際に食べてみると、トマトのようでいて、いちごのような甘さと風味。
珍しい素材について伊藤さんに尋ねると「これまで4、50種類作っています。変わり種で言うと、ビーツやパプリカ、ホップ、山椒などもアイスにしました」と伊藤さん。岡山の農作物の多様性が垣間見えました。
これからのシーズンは、メロンやブルーベリー、杏、桃などが登場するそうです。

AOBAは京橋のすぐ近く。岡山城からも近いため、観光客なども立ち寄るそうです。
第一日曜日に開催される京橋朝市の日は、早朝から開店しています(午後は閉店)。
オカネツ工業広報室の櫻井真弥さんによると、岡山県内でBJのアイスクリームを販売しているのは約15件ほど。全国では420箇所のカフェや直売所、道の駅、観光施設などで導入されているそうです。2018年にはグッドデザイン賞を受賞しています。
岡山発の技術で、生産者と消費者の架け橋となるBJ。食品ロス削減の観点からも、今後の広がりに注目です。

岡山市公式観光情報 OKAYAMA KANKO.net