冬にも行きたい、趣深い後楽園の旅

冬にも行きたい、趣深い後楽園の旅
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言わずと知れた岡山の観光名所「岡山後楽園」。
今回の記事では、四季折々の美しさを楽しむことができる後楽園の「冬の顔」にフォーカスし、周辺施設の魅力も同時にご紹介します。木々の冬支度や、春に向けた庭のお手入れなど、味わい深い魅力が満載。
「冬の後楽園には訪れたことが無い」という方にこそ、寒い時期ならではの良さを是非とも感じていただきたいと思います。

掲載日:2024年01月13日 最終更新日:2024/01/29

ライター:観光ライター 杉原

後楽園だからこそのお手入れ方法

後楽園は300年以上の歴史を誇る、日本三名園のひとつです。開放的で見通しの良いつくりで、日本全国、世界各国の観光客に愛される場所。1952年には国の特別名勝に指定され、文化財保護の観点から更に保護・管理が徹底されてきました。

今回は、(公財)岡山県郷土文化財団で岡山後楽園の庭園管理を担当する栗坂さんにお話を伺いました。

庭も冬支度
「松の菰巻き」

菰(こも)を巻いた松は、秋から冬にかけての風物詩。
四季の無い国から来日した海外の観光客の方々からは「日本の冬は寒いから、木にも服を着せているの?」と聞かれたことがあるそうです。
こちらの菰、じつは松を害虫から守るための伝統的は害虫駆除方法。マツカレハという蛾の幼虫が越冬のため地中に降りる習性を利用し、松の幹に巻いた菰に害虫を誘導します。冬を過ごした害虫が再び活動を始める3月初旬「啓蟄(けいちつ)」の前に菰を取り外し焼却します。
今年の松の菰焼きは2月21日(水)10:00〜10:30に行いますので、詳細は後楽園の公式サイトからご確認ください。
「後楽園の松は約240本あるんですよ。菰の上側は虫が入りやすいよう緩く縛り、地面に近い側は虫が逃げないようきつく縛る等の巻き方になっています。菰を巻く位置は地上から130センチの高さを目安に揃えて、結び目は通路側に向けるなど、景観も大切に考えています」
また、一年を通して松の剪定作業などには多くの庭師さん、技術者さんが関わっており、松の葉先をむしるといった繊細な仕事は全て手作業で行われます。
常緑樹として、いつも瑞々しい表情を見せてくれる松。
多くの方々の支えによってその爽やかな姿が作られています。

春を迎える庭仕事

【梅の枝の剪定(せんてい)】
梅は1月頃から開花をはじめるため、早春を告げる花とも呼ばれています。
後楽園の梅林は、約100本、約20種もの梅の花を見ることができるスポット。
もともと桜林だったところを、幕末の頃に梅林にしたそうです。
梅の木をよく見てみると、太い枝とは色が異なる徒長枝(とちょうし)が真っ直ぐ伸びています。
「徒長枝が将来の樹形を乱さないよう、加えて開花後より一層、樹が美しく見えるように仕上げるために徒長枝を切る『剪定』という作業が必要になります。剪定する枝の見極めは職人の目で決めているんです。」
徒長枝は将来の枝の若返りのため必要なので、全部切り取るのではなく、今後の樹の生育のために残しておくことも必要だそう。
何気なく見ている梅も、どのように手入れされているかを知ることで見方が変わります。

【後楽園の芝焼き】
後楽園の魅力は、全国でも珍しい開放的な設計と、広い芝生地を取り入れた日本庭園であるという点です。
広々とした芝は後楽園の一番の特徴といえます。
なんと、この風景が2月には一面「真っ黒」に。
その理由は、毎年恒例の「芝焼き」です。草に隠れた害虫や害虫の卵を焼く管理方法で、風向きや立地に応じて区画ごとに火をつけていきます。
地中の芝の根は生きており、再び春に向けて芽吹いていくのです。
ゴールデンウィーク頃には新緑の季節に相応しい芝が生えそろい、新たな葉が日差しをキラキラと照り返している姿を見ることができます。

冬も楽しめる後楽園内の施設

【廉池軒】
戦火を免れた数少ない建造物のひとつ。周囲の池には錦鯉が優雅に泳ぐ姿が印象的です。
また、この建物からの景色を岡山城の歴代城主が楽しんだと考えられています。
窓の透かし彫りには「廉池軒(れんちけん)」の文字もあり、贅を感じる造りとなっています。
また、廉池軒はレンタルスペースとして使用可能。お弁当や飲み物を持参して、後楽園の散策後に廉池軒で昼食会を開くなど、前もって予約すれば多様な活用方法がありそうです。

【さざなみ茶屋】
廉池軒に隣り合うように佇む「さざなみ茶屋」
茶屋内外にある席で、景色を楽しみながらお抹茶とお菓子をいただくことができます。
岡山名物の吉備団子や備前焼を販売するショップも併設されており、お土産の購入も可能です。
さざなみ茶屋の一番の見どころは、座敷席から映える圓窓の眺め。お抹茶とお菓子のセットは500円、美しい眺めを体験できるお座敷席で飲食する場合は700円となります。
後楽園を一周した後には、さざなみ茶屋で甘味を楽しんでみてはいかがでしょうか。

岡山城の歴史謎解きミステリー

岡山城では「岡山ナゾトキミステリー 宇喜多家と岡山城の謎」を2023年9月29日から2024年3月18日まで開催しています。
内容は、松丸亮吾さん率いる謎解きクリエイター集団「RIDDLER(リドラー)」が製作した岡山城天守および烏城公園内の様々なスポットにある謎を解き明かしていくというもの。
参加費は無料(岡山城天守入場料は必要)で、想定プレイ時間は30~60分程度です。

先ずは「謎解きの書(特製の冊子)」と鉛筆をもって謎解き開始。
推奨年齢は小学生以上となっていますが、大人でも苦戦する難しさなので、個人でもご家族でも楽しんでいただけます。
岡山城内の展示に関わる4つの謎を解き、最後の謎に挑戦。最後の答えが記入できたら地下1階の受付スタッフに提出・答え合わせをします。
見事クリアするとオリジナルの認定証をプレゼント。
制限時間は無いので、ご自身のペースで謎解きが可能です。
冬の後楽園と共に、岡山城の上質な謎解きタイムも楽しんでみて下さい。

季節ごとの
魅力を楽しんで

桜や紅葉などの名所として知られ、華やかな印象の後楽園。
一方で、冬には普段通り過ぎてしまう松や梅、芝といった草木からもにじみ出るような奥深さを感じます。
また、後楽園周辺には寒さに左右されない岡山城などの室内レジャーも充実しています。
栗坂さんは、「後楽園を散策することで、”冬らしさ“を見つけることができます。近年は、温暖化などの影響で四季折々の風情を感じにくい気候になってきていますが、そんな時こそ歴史ある日本庭園を見て、季節ごとの良さを思い出してくださいね。」とお話をして下さいました。
人の手によって守られている後楽園。多くの方々の庭仕事が連綿とつながり、300年以上前の風景がそのまま現代に伝わっています。

気候や時代が移り変わっていく中でも、変わらない美しさを誇る後楽園と、その周辺施設で『冬の風物詩』を楽しんでみてはいかがでしょうか。

岡山市公式観光情報 OKAYAMA KANKO.net