「おかやま文学フェスティバル」でZINEや本を楽しもう

「おかやま文学フェスティバル」でZINEや本を楽しもう
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「岡山を文学のまちにする」を合言葉に官民一体となった街づくりが進んでいます。岡山市は市独自の「坪田譲治文学賞」や「市民の童話賞」など文学にまつわる長年の取り組みが評価され、昨年10月、国内初、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「創造都市ネットワーク」への加盟が認められました。2月23日から3月10日までの期間は、市内各地で文芸を楽しむ「おかやま文学フェスティバル2024」(主催・岡山市、岡山市文学賞運営委員会、瀬戸内ブッククルーズ実行員会)が開催されます。今年で2回目。今年は「おかやまZINE(ジン)スタジアム」という新たな試みもスタートします。子どもも大人も文学を味わうひとときにしませんか。

掲載日:2024年02月17日 最終更新日:2024/02/18

ライター:観光ライター 頼實

岡山で文学を感じる1ヵ月

全体のスケジュールは、2月23日(金・祝)、岡山芸術創造劇場ハレノワで行われる「坪田譲治文学賞贈呈式・記念行事」(五木寛之さんの講演会も開催)を皮切りに、2月25日(日)11時〜16時、旧内山下小学校体育館で初開催の「おかやまZINEスタジアム」。
3月3日(日)11時〜15時、表町商店街(上之町、中之町)で一箱古本市・古本市の「おかやま表町ブックストリート」。
3月9(土)、10日(日)11時〜16時、旧内山下小学校で全国の出版社や書店が集まる「おかやま文芸小学校」という日程。

中でも注目は、初開催の「おかやまZINEスタジアム」(2月25日)です。ZINEとは、商業出版ではなく、個人や小グループが作成する非営利の出版物のこと。
ZINEスタジアムには、様々なジャンルのZINEを作る作家やグループ70件が出店するほか、「第37回坪田譲治文学賞」を受賞した乗代雄介さんのトークイベントやZINEを作ってみるワークショップ、読み聞かせ、出張図書館なども企画されています。1日で文学やZINEの魅力を感じることができそうです。
(昨年の写真は全て「おかやま文芸フェスティバル2023」の様子。「瀬戸内ブッククルーズ実行委員会」提供)

「おかやま文学フェスティバル」を主催する「瀬戸内ブッククルーズ実行委員会」の根木慶太郎さんにインタビューしました。
「文学フェスティバルの魅力は、本の作者や書店、出版社が読者と直接顔を合わして、本を通して対話ができること。また、出版社、書店、図書館司書、個人の作家、読み聞かせボランティアなど様々な立場の人が集まり、イベントを一緒に作るというところも珍しい点です」と根木さん。
「おかやま文芸小学校」(3月9日、10日)には、中四国をはじめ東京、大阪、沖縄の出版社、小さな書店、学校司書有志の会、岡山県立図書館などが出店し本を展示・販売します。文豪が愛したおやつやコーヒーが楽しめる「文豪珈琲」も出店します。

「おかやま文芸小学校」の開催場所となる旧内山下小学校の古い校舎も魅力的です。
昭和初期に建てられた校舎は市内初の鉄筋コンクリートの3階建て。岡山空襲でも焼失せず、戦後も多くの子どもたちを送り出し、2000年に廃校。天井に張り巡らされた配管や、温もりある木の廊下や建具、校舎側面のアールなど、戦前の近代建築の意匠は一見の価値ありです。現在は市内中心部のにぎわい創出のためアートイベントなどの会場として活用されています。
※旧内山下小学校と体育館へは、上履きやスリッパを持参してください。

ZINE(ジン)とはどんなもの?

根木さんにZINEについて聞きました。
ZINEは同人誌やリトルプレスと同じ意味で、商業出版との見分け方は、本の裏側にある番号コード「ISBN」の有無。最近は、独自性やテーマの切り口が受けて、ZINEを取り扱う書店も増えてきているそう。
「ZINEは、アメリカ西海岸で生まれた言葉で、写真をコピーして売り始めたのが最初。誰でも、表現したいものさえあれば、ZINEを作ることができます。例えば、子育て中の人なら、子どもの写真や子どもが作った作品でもいいと思います。形式も様々で、コピー用紙に印刷してホッチキスで留めるだけで、十分作品になります」。

「小さなイベントはこれまでにもありましたが、これだけの規模のイベントは岡山では初めて」と根木さん。
出店するジャンルは、短歌、小説などの「オリジナル」、写真や漫画などの「アート」、フリーペーパーなど「フリー」、ミニコミ誌、評論など「ノンフィクション」の4部門。有料だけでなく、無料で配布されるZINEもあります。
「SNSを使った発信とは違って、紙の本は、紙質やデザイン、選んだフォントなど作り手の意図を読者が感じられるという良さがあります。作り手の思いを読者が追体験できることも魅力の一つだと思います」と根木さん。

私小説や街歩きが楽しくなるZINEも

「おかやまZINEスタジアム」に出店する岡山市在住のZINE作家・岡村由紀子さんに話を聞きました。
「税理士事務所の事務員として働きながら10年間、家族をテーマにした作品を書いて新人賞に応募してきました。残念ながら新人賞は取れなかったのですが、パソコンの中に眠る作品を何らかの形にしたいという思いで、45歳の記念に自費出版したのが最初です」
岡村さんのZINEは、家族や女性性をテーマにした私小説3部作。文庫本のような装丁で、表紙デザインは友人が手掛けたそう。「売れる、売れないではなく、たった一人の人に響く作品ということが大切なんですね」と岡村さん。

もう一つは、独自の目線で岡山の面白さを紹介する福田忍さんの「おかやま街歩きノオト」。16年前に1号を制作して以来、商店街や公園遊具、狛犬など切り口を変えながら現在は25号に。徒歩と電車、バスなどを利用し足で稼ぎ、関心あるテーマに沿った本作りを進めてきました。福田さんは「今は、ZINEスタジアムのために、東京をテーマに番外編を作成しているところです」と話します。

ZINEを作るワークショップや食ブースも

実際にZINEを作るワークショップも楽しそうです。スケジュールは以下の通り(写真は「おかやま文芸フェスティバル2023」のワークショップの様子)。
・手軽にできる豆本づくり:11時15分〜、12時15分〜、14時〜、15時〜(参加費:1800円、所要時間:45分、対象:小学校高学年以上)
・みのまわリポート 岡山文学編(参加費無料、受付は随時)
・おすすめZINEのZINEを作ろう:11時〜(参加費:1000円、所要時間30〜60分)。

また、「ZINEから始まる本の愉しみ」と題した2つのトークイベントもあります。
・「第37回坪田譲治文学賞」を受賞した乗代雄介さんによる「書くことのすゝめ」は13時〜14時45分。
・ZINE製作者・南蛇楼綾繁さんによる「小さな出版物の作り方」は15時〜16時。
食ブースでは、コーヒーやパン、焼菓子、和菓子などが登場します。お楽しみに。

3月はブックストリートや文学関連イベント開催

最後は、一箱古本市・古本市「おかやま表町ブックストリート」(3月3日)の紹介です。
表町商店街・上之町に、古書店による古本ストリートが登場します。
隣の中之町では、一般参加者が一箱分のスペースで新刊や古本、ZINE、雑貨などのグッズを販売します。出店者それぞれの個性が見えるので、思わぬ発見や出合いがあるかも。商店街の通り沿いに併せて約100件が並び、賑やかな1日になりそうです。

このほか、竹久夢二の詩の朗読会や坪田譲治「子どもの館」など関連事業のほか、3月9日〜30日の期間、奉還町商店街の地域交流ステーションverde(岡山市北区奉還町3-1-32)では、期間限定シェア型書店「みんなの奉還町書店」を開催します(主催・一般社団法人SGSG)。現在、出店希望者の申込みを受け付け中です。

親子対象で、夏目漱石ゆかりの地・岡山市東区金田を中心に巡る「おかやま文学バスツアー」(3月30日開催・要申込み)も開催が決定しました(主催・おかやま観光コンベンション協会)。製本工場見学や和綴じノート作り体験のほか、日乃出醤油小泉醸造元で楽しむ「漱石ロード弁当」付き。こちらもチェックしてみてください。

岡山市公式観光情報 OKAYAMA KANKO.net