初公開!宇喜多直家宛の「将軍からの手紙」
【岡山城】
今回、岡山初公開となる「将軍からの手紙」があると聞いて、まずは岡山城を訪ねました。
岡山城の学芸員・原田莉沙子さんが「これぞ、秘蔵っ子」と推薦するのは「宇喜多直家宛足利義昭御内書」です。織田信長に追放された時の将軍・足利義昭から宇喜多直家に宛てた手紙で、全国の有力武将に対し、再起を図るための加勢を呼び掛けた貴重な資料です。
宇喜多家大河ドラマ化への機運が高まる中、昨年末に収集。さらなる盛り上がりを期待して、今年11月には、岡山城での一般公開が予定されています。
義昭の花押もある手紙は、後年、掛け軸に仕立てられたもの。「たった3行ですが、援軍を求める率直な言葉が並びます。その時の戦況の読み合いもあったのでしょうか。緊迫感が伝わってきます」と原田さんは話します。
原田さんは「岡山シティミュージアム」勤務などを経て、3年前の岡山城リニューアル時に着任しました。これまで、文字資料について研究を深めてきました。
「性格が滲み出るなど、文字の書きぶりからは書いた人の人柄が伝わります。文字資料は、歴史上の人物の生き生きとした心情が読み取れて面白いです」原田さん。
岡山の町を拓き、城下町の基盤を築いた直家。戦乱の世で、どのように立ち回り、生き延びたのか。手紙からは、その一端が伺い知れます。
城再建を願い市民から集まった寄贈品
原田さんによると、岡山城の所蔵品の大部分は市民からの寄贈・寄託品で構成されています。戦国時代〜江戸時代を中心に、鎧や刀、掛け軸など、各家の家宝として代々受け継がれたものばかりです。
岡山城は、1945年6月29日、岡山大空襲で天守を焼失しました。高度経済成長期に入り、復興のシンボルとして1966年11月、再建(写真は、岡山映像ライブラリーセンターより)。2026年には、再建60周年の記念の年を迎えます。
「再建に合わせて、岡山ゆかりの方や市民から寄贈品が次々に集まりました。一度なくなった町のシンボルが復活したことへの当時の人たちの期待や並々ならぬ思いがあったのだと感じられます」と原田さん。
写真は、寄贈資料の一つで、鎌倉時代の「太刀 銘 雲生(うんしょう)」(岡山県指定重要文化財)。「令和の時代になっても、先代の思いを継いだ方からの寄贈が続いています」と原田さんは話します。
岡山映像史のミッシングリンクを“発見”
【岡山映像ライブラリーセンター】
岡山映像ライブラリーセンターでは、RSK山陽放送が開局以来、所有する貴重な映像や音声をデジタル化して一般公開しています。
アーカイブ担当の小松原貢さんに、紹介してもらった秘蔵っ子は、終戦直後の岡山の町を8ミリフィルム(写真は同型のカメラ)で記録した「ホイットニー少佐のフィルム」です。
200フィート巻きリール12本(約3時間分)で、焼け跡から戦後2年で活気を取り戻した表町商店街や稲刈りや漁業風景など、昭和20年代の岡山の日常を映し出しています。
小松原さんは、1977年山陽放送入社の記者兼カメラマン。
フィルムの存在を人づてに知ったのは、小松原さんが倉敷支局勤務時代のこと。岡山映像史の空白を埋める大変貴重な資料であることから、ホイットニー少佐の娘・ローリスさんが暮らすアメリカ・ミルウォーキーまで会いに行き、長年の交流を経てフィルムの寄贈を受けました。
岡山の復興と繁栄を知ることができる貴重な資料をぜひ視聴してみてください。
「被写体となった県民、市民に見てもらいたい」
センターでは、膨大なアナログ・デジタル映像に合わせて、市民から寄せられた大正時代の映像も保存しています。
中でも、倉敷の大地主・大橋家の7代目平衛門が撮影したフィルムは約130本と膨大。倉敷高等女学校(現在の青陵高校)の運動会の様子や、昭和初期の筏流しや高瀬舟など貴重な映像を見ることができます。
「映像ライブラリーセンターの目的は、長年、被写体となった県民、市民の皆様に映像を見ていただくことです」と小松原さん。
YouTubeでも映像の一部を見ることができますが、センター内の試聴ブースでは、デジタル化を終えた映像を試聴することができます。16ミリカメラの「ベル&ハウエル70DR」など、歴代フィルムカメラも展示しています。
鳥瞰図に描かれた隠れキャラとは?
【岡山県立図書館】
最後に岡山県立図書館を訪れました。
県立図書館は160万冊の蔵書に加え、「資料保存センター」という観点から、岡山県にまつわる資料も多数有しています。
同館郷土資料班の司書・佐藤賢二さんが推すのは、資料の一つである「岡山カルチャーゾーン鳥瞰絵図(500分の1)」です。
2019年、倉敷在住の画家・岡本直樹さんが約4年の歳月をかけて書き上げた絵図は、カルチャーゾーン一体の情報が詰まった内容で、対象物をななめ上から見下ろすような視点で描かれた“アイソメトリック画法”という描き方が特徴です。
元々は天神山文化プラザに飾ってありましたが、2023年7月、図書館が借り受け、図書館利用者の往来が多く、最も人目に付きやすいエントランスに設置されました。
2020年には「岡山カルチャーゾーン鳥瞰絵図2種(北・南)1250分の1」も発行されています。「こちらの2枚組の地図は、貸し出しもできますので、ぜひ手元でじっくりと見てみてください」と佐藤さん。
地図が好きで町の定点観測を行うという佐藤さん。
絵図は航空写真などの資料だけでなく、実際に歩かないと分からないような細部まで描かれていると話します。
佐藤さんによると、桃太郎のお話に登場するキャラクターが絵の中に隠されています。「この絵図が好きで、天神山文化プラザに度々見に行っていたのですが、ある時、隠れキャラの存在に気がつきました。桃太郎と猿と犬は見つけましたが、実はキジだけまだ見つかっていません」。
60年以上市民に愛され、今年3月末に閉館した岡山市民会館の姿も。「地図の中にはすでにない建物もあります。カルチャーゾーン周辺の開発も近年進んでいるので、町の移り変わりという視点で見てみると、面白い発見があると思います」
「個人的には『三大岡本作品』を推しています。岡山駅前にある岡本錦朋の『桃太郎』、RSK本社前の岡本太郎の『躍進』、そして、県立図書館の岡本直樹の『鳥瞰図』。岡山に来たらぜひこの3作品を見て帰ってください」と佐藤さんは話します。