常住寺(じょうじゅうじ)は岡山市門田文化町にあります。
岡山藩池田家の祈禱寺として岡山城下内山下石山にありました。
廃藩後は岡山県内のお寺と合併移転を繰り返し、1919年2月22日に現在の地に。
天台宗の高僧葉上照澄大阿闍梨(はがみしょうちょうだいあじゃり)が住職を務めた名高いお寺です。
後に長い年月お寺を守る住職が不在となり、風雨にさらされ荒廃しました。
歴史的にも重要なお寺をよみがえらせるべく「常住寺復興プロジェクト」が立ち上がります。
常住寺は祈祷寺ですので檀家はいません。
何もないところから、常住寺の復興はどのようにおこなわれてきたのでしょうか。
毎月6日は「常住寺護摩の日」キッチンカ―がやってきたりイベントがおこなわれたりも。
毎年3月6日の葉上照澄大阿闍梨顕彰法要には、黒住教や金光教、カトリック、イスラム、神道や真言宗、立正佼成会などさまざまな宗教の代表者があつまり世界平和の祈りを捧げます。境内ではマルシェが開かれることもあります。
宗旨、宗派問わず誰もが訪れて祈り遊び、そしてご縁でつながるお寺、常住寺を紹介します。
掲載日:2024年08月31日 最終更新日:2024/08/16
ライター:観光ライター 梅緒
常住寺
岡山藩の祈祷寺
常住寺は岡山藩池田家の祈祷所でした。
廃藩後は上石井にあった興国山長延寺と合併し同所に移り、長延寺の寺号を廃止して常住寺と称し、その後は和気郡の南光院に合併移転し1919年2月22日に現在の門田文化町に移転しました。
天台宗の高僧葉上照澄大阿闍梨(はがみしょうちょうだいあじゃり)が50年間住職を務めた名高いお寺です。
一時は管理する人がいなくなり荒れ果ててしまいます。
葉上照澄大阿闍梨 画像:常住寺提供
天台宗の高僧。「宗教協力なしに世界平和はない」と1987年比叡山にて世界の諸宗教代表者と世界の平和の祈る「世界宗教サミット」を立ち上げ開催。世界のさまざまな宗教への交流に貢献し「比叡山天台宗世界平和の祈りの集い」をプロデュースします。
天台宗の数ある修行の中でも最も過酷な修行「千日回峰行」を達成しました。
常住寺の寺宝
常住寺の寺宝 不動明王二童子立像 画像:常住寺役員提供
江戸時代 18世紀 常住寺蔵
不動明王二童子立像は常住寺の本尊です。火焔を背に右手に剣、左手に羂索(けんさく)をもち、岩座上に直立しています。
不動明王の右には、使者である二人の童子、右手に制多迦童子(せいたかどうじ)、左には矜羯羅童子(こんがらどうし)が配されています。
常住寺の寺宝 千手観音菩薩座像 画像:常住寺役員提供
江戸時代 18世紀 常住寺蔵
胸の前で合唱している両手と40本の手があり、背後の40本の各手が25の世界を救うとされることから千手といいます。
備前岡山藩の祈祷所だった常住寺には藩主ゆかりの寺宝が確認されています。
これらの寺宝は岡山県立博物館に寄託されています。
めったに見ることはできませんが、常住寺には貴重な寺宝がありました。
常住寺復興プロジェクト
葉上照澄大阿闍梨顕彰碑
常住寺復興にあたり、葉上照澄大阿闍梨の顕彰碑を建てました。
顕彰碑の賛文は黒住教第6代教主から。想定したものより長文になりましたが内容は素晴らしく葉上師のお人柄が伝わるものとなりました。
三千神佛安寶堂(さんぜんしんぶつあんぽうどう)叩き彫佛奉納
昭雲工房による叩き彫佛三千躰が安置されています。
叩き彫佛は自然木でできており、形もお顔もそれぞれちがいます。
三千躰のなかから、自分だけの叩き彫佛を見つけて奉納することができます。
選んだ叩き彫佛に住所と名前のプレートが付きます。そして比叡山根本中堂の霊木「楓」の分身佛(木端佛)が授与されます。
遠くにいてお参りができなくても、「ああ、あそこに自分の仏さんがあるんだ」と常住寺と繋がっている安心感がえられるでしょう。
毎月6日は常住寺護摩供養の日です。
午後2時から本堂向かいにある、護摩堂でおこなわれます。
護摩供養は炉に細く切った護摩木を燃やし、供物を入れて神仏を供養し加護を祈る儀式です。
この護摩堂は地域の方の手づくりで、護摩が焚けるように護摩炉の下にコンクリートが敷かれています。
永宗師の全身全霊で唱えるお経の声と、併せて打たれる太鼓の音に次第に心が落ち着いてきます。
常住寺客殿・寺務所J3スタジオ 「こころひとつにRNN」
RNNとは人道援助で世界をつなぐNGO(非政府組織)のネットワークです。
宗旨・宗派を超え、心が繋がり楽しく元気になるような番組を作成、配信。黒住事務局長、永宗委員長、ゲストにより毎月第2火曜日午後8時からFacebook、YouTubeなどで配信されています。
復興前の常住寺境内、本堂右側です。 画像提供:常住寺
荒涼としていて、ススキやセイタカアワダチソウが生い茂っています。
きれいに整備されました。
本堂には常住寺復興支援イベント委員会のメンバーさんが奉納した、干支の「龍」の絵が飾られています。
比叡山根本中堂楓プロジェクト~昭雲工房~
比叡山根本中堂楓プロジェクト
三千神佛安寶堂に安置されている叩き彫佛三千躰は、比叡山根本中堂改装の際に伐採された楓が使われています。
比叡山根本中堂改修工事で伐採された楓を常住寺復興のために譲り受けました。
比叡山根本中堂は比叡山延暦寺の総本堂です。
根本中堂の楓はいわば霊木であり大変神聖なもので、神霊が宿るとされています。
その根本中堂の楓と、岡山や京都の神社仏閣の霊木などで三千佛がつくられました。
昭雲工房
三千神佛安寶堂の叩き彫佛を手がけたのが、勝田郡奈義町にある昭雲工房の山田尚公(やまだなおきみ)さん、直禾(ただか)さん親子です。
山田尚公さんのおじいさん(初代昭雲)は、世界的に有名な版画家棟方志功さんとご縁がありました。
昭雲工房の叩き彫は初代昭雲の木彫と棟方志功さんの版画から生まれました。
三千神佛安寶堂の三千躰の他にも、本堂に二千躰の叩き彫佛が安置されています。
P]ay(遊ぶ)&Pray(祈り)
境内にある聖地遥拝所(せいちようはいしょ)です。
常住寺は宗旨、宗派問わず誰でも訪れて祈ることができます。
金光教霊地、ブッタガヤ、メッカ、エルサレム、バチカン、黒住教霊地神道山、高野山、伊勢神宮、比叡山。円の中心から示されたそれぞれの聖地に向かい、お祈りを発信してください。
こちらは「火焔ウォール」といいます。不動明王は常住寺のご本尊。
不動明王の後背部にある火焔と剣のイラスト。前に立つと「あなたもお不動様に!」ポーズを取ってぜひ写真に収めてください。
毎月6日以外は三千神佛安寶堂もしまっているので、参拝に来られた方に少しでも楽しんでもらおうとつくられました。
毎月6日の常住寺護摩の日のはキッチンカ―「見習い農家cafe」さんが不定期できます。
拠点は岡山市足守。マルシェやイベントにキッチンカ―で登場します。
自家製野菜を使った「包み揚げピザ」は外がサクサク、中がもちもちして具材もジューシーでたっぷり。
青いキッチンカ―が目印です。
見習い農家cafeさんの、「白桃かき氷」をいただきました。
ふわふわのかき氷に、桃の手づくりシロップ。しっかりと桃が感じられます。
岡山で有名な桃の産地の一つ、一宮地区の桃をふんだんに使用しています。
最後の一滴まで美味しくいただきました。
※散華(さんげ)とご朱印 ※散華は紙で作ったハスの花びらです。法会などで使います。
岡山藩池田家の祈禱寺であり、高僧葉上照澄大阿闍梨が住職を務めていた歴史のある常住寺。
廃寺になっていたかもしれない常住寺の復興がすすんでいます。
何もないところから、常住寺復興プロジェクトメンバーが知恵を絞り、葉上照澄大阿闍梨の顕彰碑ができ、三千神佛安寶堂が建立されました。
護摩供養に参拝して家内安全を祈願し昭雲工房の散華をいただき、今月のご朱印を求め、見習い農家cafeさんのふわふわ白桃かき氷を満喫しました。
心静かに祈り、無邪気に遊んだお寺での一日。宗旨、宗派を問わず人々が集まるお寺、常住寺を訪ねてみませんか。