「うらじゃ」とは?
「うらじゃ」は、岡山に伝わる「吉備津彦命(きびつひこのみこと)=桃太郎」と「温羅(うら)=鬼」との戦いを描いた桃太郎伝説から生まれた祭りです。1994年秋に岡山青年会議所を中心に始まり、毎年8月に岡山市で開催されています。
観客動員数は約50万人を超え、今年で29回目の開催を迎えました。「うら(鬼)+じゃ(岡山弁)」の名前の通り踊りの主役は鬼。踊り子は、鬼や桃太郎を連想させる衣装や、それぞれの踊り連が持つテーマに合わせた衣装を身にまとい舞い踊ります。また、踊り子はもちろん、観客も温羅メイクや総踊りに参加することができるため、誰もが祭を楽しむことができます。
参加型踊り連
「うらじゃ魂」
当日参加型の踊り連であるうらじゃ魂、通称「うら魂(うらたま)」。踊り連に所属していない方もうらじゃに気軽に参加してほしいという想いから2006年にスタートしました。事前予約と当日受付から参加登録が可能で、1時間程度の説明と踊り練習を経て、本番の舞台へ立つというシンプルな流れが大きな特徴です。年に一度しか設置されない大きな演舞場に初めて立って感動したという方や、うら魂が好きで10回以上参加している常連さんもいます。今年は、子どもコースの事前予約だけで80名の定員に達するほどの人気ぶりでした。参加するには、観客、踊り子、裏方スタッフという3つの選択肢しかないように思われがちなうらじゃですが、「うら魂」は4番目の関わり方として注目されています。
踊り連インタビュー
「蓮雫(れんげ)」
「蓮雫(れんげ)」は、大学生7割、社会人3割のメンバーで構成され、スタッフも含めて100名以上の規模を誇る踊り連であり、力強く、エネルギッシュな若者たちで構成されています。今年で15周年を迎える彼らの踊りは、ダンスの魅力だけでなく、大きな旗を振るなど舞台の演出にもこだわっているため見応えがあります。練習は週に2回、運動公園の芝生で行われ、周囲にいる他の踊り連と一緒に頑張る雰囲気が漂っているそうです。彼らは楽しみながらも、メリハリを大切にすることを心がけており、観客に多彩な魅力を提供しています。
蓮雫は「うらじゃに長く続いてほしい!」という強い想いを持っています。うらじゃという祭りができた当初は、岡山市の中心で祭りを開催することに賛否両論あったそう。様々な意見を持った人がいる中でも、うらじゃが多くの人に愛されて長く続くように、蓮雫は「まず自分たちが誠意をもって参加すること」を決めています。他県の祭りでも踊る経験を積んできましたが、やはり地元の祭りが一番大切だと感じており、本番に向けて一人一人が本気で練習中。昨年はうらじゃの最優秀賞を受賞。その評価を忘れず、踊り連としての「誉れ」を胸に本番に臨みます。
踊り連インタビュー
「七彩(なないろ)」
「七彩」は、子どもから大人まで幅広い年齢層が参加する踊り連です。踊り手は30~40代がメインですが、最年少メンバーは、なんと2歳!ご両親が踊り手で、そのお子さんも踊り手として加わり、家族全員で連に所属するという方もいるそうです。また、七彩の魅力は、毎年新しくなる歌とダンス。オリジナルのパフォーマンスを創り上げるため、難しさもありますが、やりがいもあります。練習は週に一度、日曜日に南区灘崎の公民館で行われます。和気あいあいとした雰囲気の中にもメリハリを大切にしている様子が伝わってきました。
七彩の今年のテーマは「結ぶ(むすぶ)」。温羅が岡山の地に根付き人々と繋がっていった様子を踊りで表現し、身近な人々との繋がりを思い出してもらうことが狙いだそうです。
「私たちは日々沢山の方に支えられています。本番では、観客の皆様、裏方の皆様、踊り連のメンバーへ、ダンスを通して感謝の気持ちを伝えたいです。熱中症には気を付けながらも、最高のパフォーマンスをお届けします。そして、うらじゃの醍醐味である総踊りには、メンバー全員で元気に参加したいと思っています。」と語っていただきました。
大注目の演舞場
下石井公園!
踊り連「蓮雫(れんげ)」の今年のテーマは「どどんと」。夏の夜空に輝く花火をイメージし、蓮雫の一人ひとりが集まることで花火そのものを表現するような振り付けも演舞に盛り込みました。また、昨年のうらじゃで最優秀賞の踊り連となった蓮雫は、「更に蓮雫のファンを増やしたい!」という意気込みから、誰もが惹かれ、ふと足を止めて眺めてしまう花火になぞらえたテーマを掲げています。
「下石井公園の演舞では特に『蓮雫!』という声援が大きく聞こえ、応援している観客の皆様の存在を強く感じました。祭の醍醐味は目の前にいる多くの人々を巻き込むこと。これからも、踊り子だけでなく観客の皆様と一緒になって祭を盛りあげていきたい」とのことでした。
一年に一度の舞台
市役所筋!
踊り連「七彩(なないろ)」は、メンバー全員で本番に参加できた幸せを感じたそうです。一番記憶に残っているのは市役所筋での演舞。
当然のことですが、いつもは交通量の多い場所なので、年に一度のうらじゃでしか立てない場所です。その場所で踊りきれたのは色々な方の尽力のおかげだ思うと、感無量で涙がにじむ場面もあったとのこと。「暑い中で見に来てくださった観客の皆さん、うらじゃを支えて下さった裏方の皆さん、うらじゃが作ってくれた全てのご縁に対する感謝が改めて湧き上がってきました!」と語っていただきました。
うらじゃ最後の夜は
全員参加の総踊り
沢山の市民を巻き込んで行われる、うらじゃ2日目ラストの総踊り。最後のうらじゃ名物「総踊り」では岡山が一つになったような感覚がありました。踊り連「七彩(なないろ)」は、うらじゃでしか会えない「祭り仲間」とも会うことができたそうです。「高校生になって勉強・部活があり練習や本番に参加できなくなった子や、出産・育児で踊り子から一旦離れた方が、当日、見に来てくれたんです!」と語っていただきました。多くの人々の出会い、踊り手の熱気、闇に響くうらじゃの音頭、様々なエネルギーが混ざり合い、祭り最後の夜を盛り上げました。
運営陣の想い
「うらじゃ」は実行委員会の多くがOB、運営組織のすべての人々がボランティアで結成されています。2024年は第29回、来年には記念すべき第30回を控えており、もちろんその内容は毎年同じではありません。運営陣は常に新しいことに挑戦しており、毎年うらじゃを良くしようと沢山のアイディアが出ています。その全てを実現するのはとても難しいため悩む場面もありますが、その様な状況のなかでもスタッフたちの情熱と英知の結晶であるアイディアが祭を盛り上げてきました。
祭りの見どころは、何と言っても「総踊り」。無事に総踊りを迎え、観客・踊り子・スタッフが一体になっている姿を見ると準備期間の疲れもふっとび、「来年も頑張ろう!」という意欲になるとのこと。また、今年からは「岡山芸術創造劇場ハレノワ」が新しく演舞場として開放されました。今後の演舞場としての発展にも注目です。
うらじゃの伝承
「うらじゃ」を29回という長い間続けられている理由は、踊り子・スタッフ・観客皆様方のうらじゃ愛があってこそだと感じました。観客をメイクや総踊りで参加者として巻き込むことができるうらじゃは、まさに「唯一無二の祭り」です。「うらじゃ」には当日飛び入り参加OKの踊り連「うらじゃ魂」が毎年待っていますので、あなたも是非「うらじゃ」の参加者、そして伝承者の一人になってください。