金山寺は岡山市北区の山中にあります。
報恩大師が天平勝宝元年(749年)に開いた岡山県を代表する古刹です。
鎌倉時代には栄西を輩出しました。松田氏に改宗を迫られ焼き討ちされた後、宇喜多直家公により再建された歴史のある寺院です。
非公開だった江戸時代のお殿様の客殿は拝観事業として一般公開され、豪華で精彩な美しさの迎賓館が見学できます。
お寺の随所に敷かれているイランの遊牧民が手織りで作った絨毯ギャッベの芸術的な美しさと厳粛な雰囲気が相まって、まるで美術館に居るようです。毎月行われる写経、初詣の護摩供養、2月の金山寺会陽と見どころが多い金山寺を紹介します。
掲載日:2024年09月15日 最終更新日:2024/09/11
ライター:観光ライター 梅緒
金山寺とは
1300年前、奈良時代に孝謙天皇の祈願により報恩大師により開かれました。
本尊は報恩大師自作の千手観音。備中吉備津宮の葉上房栄西により灌頂堂、護摩堂他堂宇が新造、松田氏による焼き討ち後には、鳥取の伯耆国大山寺から法印圓智が来山し岡山城主宇喜多直家の援助で復興します。山中に建つ三重塔、本堂、山門、護摩堂、灌堂など寺院の主要建物群で形成される山上伽藍(がらん)です。残念ながら本堂は2012年に失火により焼失しました。
本殿火災の後に金山寺の住職に就任した岸本住職は、イベントなどの事業をすすめ金山寺の復興に尽力しています。
護摩堂
1575年(天正3年)に建立されたとみられています。
1956年(昭和31年)に岡山県重要文化財に指定されました。
中央厨子には不動明王を安置し、火炉からの熱を逃がす折上げ天井になっています。
三重塔
1788年(天明8年)邑久大工の田淵繁枚が手がけました。
1992年(平成4年)に岡山県重要文化財に指定されました。
初層、化粧部材はヒノキ、二層、三層はマツが多く使われています。
客殿
客殿は池田藩によって建立された江戸期の木造建築です。岡山城内に9つあった屋敷等はほとんどが消失しており、今日では金山寺のみ現存しています。客殿は藩主が夏季に滞在する間です。滞在中お殿様が楽しめるようにさまざまな仕掛けや技法が使われています。
作画は狩野派岩本法眼。襖絵には逆遠近法が取り入れられ、見る角度によって机の長さが変わったり、階段が短くなったり長くなったりします。他にも何カ所かトリックがありますので、実際に見て体験してください。
精巧な鷹の図はまるで生きているよう。作者は襖絵と同じ岩本法眼です。
躍動感がある鷹の図に目が奪われます。
金山寺とギャッべ
ギャッベはイラン遊牧民の手織り絨毯です。金山寺ではイランの絨毯メーカー、ゾランヴァリ社のギャッベのみを展示しています。化学染料を使用せず天然の草木染のみで織られています。どうぞ安心して触れてみてください。美しいギャッベがそれぞれの和室に調和しており、眺めているだけで心が癒されます。
光の加減で表情を変えるギャッベのご朱印帳が人気です。
素朴なデザインと鮮やかな色彩が特徴。ご朱印集めの他にも、部屋に飾ってインテリアとしても素敵です。
写経
毎月第三日曜日と甲子(きのえね)の日に10時から潅室(かんしつ)において写経が行われています。
潅室とは人気がなく静かな部屋を意味し、すこし明かりをおとした静かな部屋で岸本住職がお経を唱え御説法をしたあと、それぞれのペースで般若心経などを写経します。
無心に筆を動かしていると、周りの音や気配が気にならなくなり心が落ち着いてきます。
金山寺の拝観料、写経後のお茶代込みで参加費は2,000円です。
金山寺のイベント
金山寺復興事業の一環として新年1月1日、2日、3日と第一日曜日に行われ、特設された護摩堂で岸本住職が一日に4回護摩供養をおこないます。
燃え盛る炎の側での祈祷は体力も精神力も必要とします。
毎年2月の第1土曜日金山寺会陽(きんざんじえよう)が行われます。裸祭りとも呼ばれ小雪が舞うような極寒の夜に、はだかの男たちが宝木(しんぎ)を奪い合うお祭りです。岡山県の裸祭りのなかで、先陣をきって開催されます。
客殿の美しさやギャッベとのコラボレーションなど、観光の観点からも訪れる人々が心から楽しみ癒されるお寺です。厳粛な護摩供養で願いごとを祈るのも貴重な体験となるでしょう。
定期的に開催されるイベントに参加するのも楽しそうです。歴史的にも重要な金山寺で客殿の回廊から美しい庭を眺め客殿を拝観し、ゆったり過ごされたお殿様の気持ちに想いをはせてみませんか。