西大寺会陽(はだか祭り)~備前平野に春を呼ぶ伝統行事~

西大寺会陽(はだか祭り)~備前平野に春を呼ぶ伝統行事~
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岡山市西大寺、冬の風物詩である西大寺会陽「はだか祭り」。毎年多くの地元の方々や観光客を魅了しています。
約1200年前、西大寺観音院を創設した安隆上人が奈良東大寺の修正会(しゅしょうえ)を伝えました。
永正7年(1510年)新年の修正会。結願の日に配ったお札には作物が豊作になり、福が得られるご利益があると希望者が殺到しました。
やむを得ず参詣者の上に投与したところ、参詣者が裸になり奪い合ったのが始まりです。

令和7年2月15日(土)西大寺会陽はだか祭りは奉修第五百十六会(え)を迎えます。
2月厳冬の深夜、西大寺観音院本堂の本堂に集まる約10,000人のはだかの男たちがひしめき御福にあやかろうと、宝木(しんぎ)の投下を待ちます。
備前平野に春を呼ぶ西大寺会陽(はだか祭り)を紹介します。

掲載日:2025年01月31日 最終更新日:2025/01/30

ライター:観光ライター 梅緒

会陽事始めから修正会結願

西大寺会陽が行われるのは2月の第3土曜日です。
会陽の19日前には会陽事始めが始まります。
会陽事始めの3日後の午前0時、西大寺から4キロ離れた広谷山如法寺無量壽院へ宝木の原木を授かりに徒歩で向かいます。
宝木の原木を受け取り、西大寺に戻るまで一言も話してはいけない決まりです。

14日前からは国家安穏、万民豊楽を祈願する修正会が始まり近隣の住職が集まります。
毎年2月(旧暦は1月)に仏教寺院で行われ、前年の行いを振り返り、新しい年が穏やかに暮らせるように祈願する法会です。
修正会結願の日に西大寺会陽で宝木投下を迎えます。

女性の西大寺会陽~会陽宵祭り、会陽太鼓~

西大寺会陽は、はだかの男性たちの勇壮なお祭りですが女性も参加することができます。
会陽前日の夜に女性の西大寺会陽「西大寺宵祭り」が行われます。
宝木争奪戦に参加できない女性を限定した、五福餅投げの福引会陽で「福女」を決めるお祭りです。
また会陽当日に白装束をまとって水垢離のみ参加し、大願成就を祈願する女性もいます。

女性だけで結成された西大寺会陽太鼓が、祭りの安全とはだかの男を鼓舞激励し祭りを盛り上げます。
平成5年2月に女性だけで結成されました。
会陽当日はもちろん各種イベントなどで演奏しています。
和太鼓に興味がある女性の方、西大寺会陽を盛り上げてみませんか。随時、新メンバーを募集しています。

はだか祭り当日~宝木投下まで~

西大寺会陽当日は午後3時過ぎから始まります。
先陣をきって行われる小学生の「少年はだか祭り」。学年によって若干内容は異なりますが大人と同じように垢離取場(こりとりば)で心身を清め、本堂で宝筒争奪に向かいます。
少年たちの健やかな成長を願い開催される、少年のはだか祭りは第51回(令和7年)を迎えます。

地域の高校生や大学生が披露する奉納演舞は西大寺会陽500周年を記念して製作された新民謡「会陽甚句(えようじんく)」。甚句とは江戸時代後期から各地で歌われた民謡です。
西大寺会陽甚句は岡山県出身の尺八奏者土井啓介さん作詞作曲編曲です。
会陽事始めから会陽当日、春の訪れまでが12曲にまとめられています。
笛や三味線シンセサイザーで構成された会陽甚句に合わせて演出された華麗な演舞奉納はみごとです。

うらじゃの「踊り連」も奉納されます。
「うらじゃ」は毎年8月に岡山市で開催される大規模なお祭りで、岡山に伝わる桃太郎伝説の鬼「温羅(うら)」がもとになっています。
「共生と融和」がテーマで、鬼のうらが主役です。
「踊り連」と呼ばれるチームが何チームもあり、きらびやかな衣装と、顔に「温羅化粧」と呼ばれるペインティングをした踊り子たちが、パフォ―マンスで観客を魅了します。

宝木争奪

冬花火が終わるころ、まわしをきりりと締めたはだかの男たちが、仁王門から境内に現れます。
西大寺会陽はチームで参加する人が多い祭りです。円陣を組んで士気を高め合うようすが見られます。
石門をくぐり垢離取場で心身を清めた後、本堂大床に登りご本尊に手を合わせ、神様の、牛玉所大権現(ごおうしょだいごんげん)に参拝、四本柱をくぐり、再び本堂に参る会陽に参加するための「裸の順路」をまわり始めます。
続々とはだかの男たちが現れ、宝木投下30分前には本堂大床に登れないくらいです。
その数約5,000人。一升枡に一人の計算で、境内全体で10,000人はだかの男たちで埋め尽くされます。

夜10時、祭りのクライマックスを迎え境内の電気が落とされます。
宝木投下の30秒前に串牛玉(くしごおう)と呼ばれる宝木の福分けの守護札100組が投下されます。

串牛玉投下30秒後、真っ暗闇の中で2本の宝木が御福窓から投下されます。
参拝客らが見守る中、湯気がもうもうと立ちあがり、もみ合うはだかの男達に消えていく宝木。男たちの波がうごめく水面下では、力強く知能的にチームワークを駆使して宝木の争奪が繰り広げられています。
参拝客が宝木の行方を案じているころには、すでに福男の手中にあるでしょう。

福男と祝主

宝木検分所で宝木が本物である証明をうけ、晴れて福男に認定されます。
令和7年の奉修第五百十六会(え)西大寺会陽の祝主は「岡山トヨタ自動車株式会社」「株式会社まつもとコーポレーション」です。
祝主は福男から福をもたらされ、宝木は祝主のもとで繁栄の象徴として永代に祀られます。

会陽あと祭り

西大寺会陽の翌日から2週間にわたり西大寺観音院の境内から向洲公園一帯に植木市、屋台や露店が並びます。
2月23日(日)には後会式・会陽のご利益を子ども達が授かる稚児行列練供養、3月2日(日)には大紫燈護摩・会陽アト祭り結願祭があります。

西大寺会陽の勇壮な宝木争奪は春を呼ぶ伝統行事です。
参加にあたっては安全対策としてルールはあるものの、健康な方であればどなたでも参加でき、見事宝木を授かった男は福男と呼ばれ福が得られるといわれています。
福男や福女になれなくても、大きなご利益が得られるといわれている西大寺会陽。国の重要無形民俗文化財にも指定されており、五穀豊穣や無病息災を祈願することは勿論、国が一つとなって、世界平和を祈るワールドワイドなお祭りです。
西大寺会陽(はだか祭り)がこれからも存続することを祈ると共に、人と繋がる慶びを感じながら、少しでも前向きな人生を送れる人が増えてくれることを願ってやみません。
500年以上も続く西大寺会陽(はだか祭り)に是非、参加してみませんか。

会陽当夜、LIVE配信にて宝木投下の感動をリアルタイムで閲覧することもできます。
第五百十六会 西大寺会陽 2025.2.15(土)LIVE配信はこちら

岡山市公式観光情報 OKAYAMA KANKO.net