「刀剣乱舞ONLINE」とコラボ! 備前の名刀を3館同時展示

鎌倉時代から南北朝時代にかけて、備前国宇甘(現在の北区御津周辺)で興った一派で、雲生(うんしょう)、雲次(うんじ)、雲重(うんじゅう)と続いたことから、「雲類(うんるい)」と呼ばれる備前の刀剣。備前刀の中でも異彩を放つ存在で、独自の雰囲気をまとっています。岡山カルチャーゾーン40周年記念の一環で、「雲の旅〜備前の名刀を追って〜」を開催し、林原美術館(11/16まで)、岡山県立博物館(11/23まで)、岡山城(11/30まで)の各会場で雲類25口を一挙公開します。今回は刀剣育成シミュレーションゲーム「刀剣乱舞ONLINE」の刀剣男士「雲生」、「雲次」と初コラボ。等身大パネルやコラボグッズ販売など盛りだくさんの内容です。コラボを通じて、雲類の歴史や備前という地域について深掘りできる機会になりそうです。
掲載日:2025年10月02日 最終更新日:2025/10/03
ライター:観光ライター 頼實
ファン目線の内容を詰め込んだ夢の企画に
岡山カルチャーゾーン40周年記念の企画「雲の旅」は、施設の垣根を超えて「刀剣乱舞ONLINE」ファンの学芸員3人のアイデアで実現しました。きっかけは、昨年10月、ゲーム内に新しいキャラクターとして「雲生」が実装(登場)したこと。
岡山城の収蔵品の中に、岡山県指定重要文化財「太刀 銘 雲生」があったことから、岡山城の学芸員・原田莉沙子さんが他の2館に呼び掛け。各施設が所蔵する雲類のほか、刀剣を専門とする林原美術館の学芸員・植野哲也さんの繋がりで他施設や個人から集め、合わせて25口を一挙公開するという大きな企画へと発展しました。「雲類がこれだけ出陣(集合)した企画は全国的に初めて」と植野さんは話します。
今年2月には、「雲次」も実装したことで、刀剣男士2人を取り上げた内容になりました。
刀剣男士「雲生」、「雲次」役をつとめる声優さんによる音声ガイド(無料)や等身大パネル設置、ファンには嬉しい絵柄の共通券(2種)販売など、「ファンに喜んでもらえるような、やりたかった企画を詰め込みました」と原田さん。3館とも初日から来場者数は上々で、ファンの心を掴む数々の仕掛けがSNSでも好評です。
そのほか、3館が所蔵している雲生、雲次の銘をデザインしたスタンプを集めてクリアファイルがもらえる「銘切スタンプラリー」(数量限定)もあります。
岡山城「雲類−異彩の備前刀−」
全体のテーマである「雲の旅」は、雲類の雲という文字から着想を得ました。展示は、3館それぞれ異なるテーマで切り口を変えて、雲類の魅力を多角的に伝えています。
岡山城では2階フロアを全て使って、雲類7口、山城国(京都)の来派(らいは)7口を並べて、比較展示を行っています。写真は岡山県指定重要文化財「太刀 銘 雲生」です。元々、旧御津町で保管されていたもので、平成の大合併で御津が岡山市に編入された際に、岡山城の収蔵品になりました。
雲類は、同国・備前の長船派とは異なり、来派や備中国青江派との共通点が多いといいます。「領主が京都から来派の刀工を連れてきたためとも言われています」と原田さんは話します。
具体的には、反りの中心が刀身の中央にある「輪反り(京反り)」で、地鉄が細かな板目肌という特徴が似ているといいます。
来派7口の中には、岡山ゆかりの刀剣もあります。
林原美術館「ウルトラ超絶技巧の世界−雲類✖️青江派➕正阿弥勝義−」
林原美術館では最も多い雲類15口と青江派13口を比較展示しています。「雲類は来派と似通った特徴を持ちつつ、作刀地が近かった備中国青江派とも地鉄や刃文が似ています。黒い鋼の表面に指で押したような『地斑映り(じふうつり)』や刃先方向に向かって線状に入る働き『逆足(さかあし)』などの特徴からも青江派の影響を見ることができます。また、雲類ならではのたなびく雲のような刃文を感じてください」と植野さんは話します。
岡山で活躍した新旧の超絶技巧を紹介しようと、金工家・正阿弥勝義の館蔵品を同時に公開しています。岡山藩のお抱えの彫金師として高度な技術を持ち、刀装具などで名を馳せた勝義は明治維新後、廃刀令を受けて、独創的な美術工芸品を生み出すようになります。
「異なる金属を使って、写実的に自然や生き物の一瞬の姿を捉えた表現力で、パリ万博へ出品するなど世界でも名を馳せた勝義。その超絶技巧を堪能してください」
岡山県立博物館「宇甘でうまれた刀 雲類」
一足早く始まった岡山県立博物館では、同時代に生まれた備前刀2口と雲類3口を比較して、雲類の魅力を紹介しています。
刀剣や工芸を担当する学芸員・馬野琴巳さんが解説してくれました。「備前刀といえば長船派が圧倒的に多いですが、岡山市北区御津付近にあった宇甘郷では3代に渡って雲類が作られていました。長船派ではなく他国の特徴が混じり合っていて、来派と青江派とよく似ています」。
贈答品としても重宝された雲類は、富山県や京都府、広島県など全国各地に点在していて、各地の美術館や博物館、個人が所有しています。
「県立博物館の所蔵品の中にもありましたが、これまで紹介する機会がなかなかありませんでした。今回、多くの人に見て頂く機会になって嬉しいです」と馬野さんは話します。
2階には、岡山後楽園をバックに雲次戦闘バージョンの等身大パネルがあります。椅子に座ってゆっくり鑑賞するのもおすすめです。
ファン垂涎のグッズ 描き下ろしクリアファイルも
コラボグッズも多数用意されて、ファンのハートを掴んでいます。
「一番人気は、展覧会開催記念の描き下ろしイラストのクリアファイルですね」と原田さん。アクリルスタンドや一筆箋なども人気です。
「作風対照表」や各館所蔵の雲類の解説が入ったミニパンフレットは、コンパクトながらダイジェスト的にまとまっています。
また展覧会オリジナルグッズには、ペーパーナイフやフライトタグ、匂い袋などもあります。
「刀剣乱舞ONLINE」の宣伝隊長「おっきいこんのすけ」のイベントもあります。
10月19日(日)11時から、林原美術館ロビーで、撮影会。同日14時から、岡山城天守前でスタンプ会を開催します(参加費はいずれも無料、要入館料)。
「関西、関東、九州からもご来場いただいています。初めて岡山城に来たという方もいらっしゃいます。ポケット学芸員の音声ガイドは帰宅した後も期間中は楽しめます。ぜひ、旅後も自宅でも楽しんでいただきたいです」と原田さんは話します。
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