岡山理科大学内に位置する「岡山理科大学恐竜学博物館」では、入場料無料で大学の研究成果や、ここにしかない貴重な標本の数々を一般公開しています。
今回は、館長である石垣忍教授に恐竜学博物館の魅力をお聞きしました。
「研究のプロセスを展示する」というコンセプトで作り上げられた展示空間は見ごたえも抜群。
ご家族でも、ご夫婦でもお楽しみいただける恐竜学博物館で、太古の生物たちのロマンに触れてみてはいかがでしょうか?
※基本的に日曜日が閉館日となりますが、月によって変更がございます。開館日カレンダーやアクセスについては、恐竜学博物館の公式ホームページをご覧ください。
掲載日:2023年04月03日
ライター:観光ライター 杉原
恐竜学博物館と一般的な博物館との違いとは?
2018年に設立された岡山理科大学「恐竜学博物館」。
標本だけでなく、モンゴルのゴビ砂漠での発掘調査から研究に至るまでのプロセスも重視して展示しています。
2020年4月にはメイン展示室をリニューアルし、展示の工夫にも磨きがかかったそうです。
そんな「恐竜学博物館」と一般的な博物館との違いとは何か、石垣館長にお聞きしました。
石垣館長:
博物館の種類としては「大学博物館」で研究や学生の勉強のための施設そのものですが、一般公開しています。
収蔵庫や実験室もあれば、教材となる標本の展示もある。研究成果も展示しています。
その「研究している状態が現在進行形で公開されている」ということが、他の恐竜関係の博物館と違う、一番の特徴です。
だから「恐竜博物館」ではなくて「恐竜学博物館」という名前にしました。
本校に恐竜コースができたのは今から9年前で、ずっと標本が増え続けてきた背景があります。
大きな標本を展示するため、空いている部屋やホール、廊下、図書室、渡り廊下などにも展示を展開していきました。
また収蔵庫そのものや、我々自身の研究の日常を展示しようということで学生や教員の研究作業風景も展示に活かしています。
ガラス張りの収蔵庫の中も見てもらえるような展示になっており、そういった細かな工夫が当館の自慢です。
ここにしかない研究成果や展示物とは?
一歩足を踏み入れると大規模な博物館にあるような標本がガラスケース内にところ狭しと並んでいます。
展示パネルには発掘場所の様子や、土に埋まった状態の化石のレプリカ等が並び、ひとつひとつの展示内容が大変分かりやすく感じました。
まさに「研究している状態が現在進行形で公開されている」という恐竜博物館ならではの見どころだと思います。
例えば、これらの展示の中で「ここにしかない展示」といったものはあるのでしょうか?
石垣館長:
大学として取り組んでいる共同発掘の現場はモンゴルのゴビ砂漠です。
化石の実物はモンゴルのもので、当館はそれを借用し、研究が終わると返却しますが、精巧なレプリカをとって展示します。
そのため、世界中でモンゴルとここにしかない標本というのがいくつもあるのです。
例えば、タルボサウルスの子ども、プロトケラトプスの幼体、ゴビハドロス、ノミンジア、ゴビヴェナトルなど、モンゴル以外では世界で当館にしかありません。
展示物から伝わる「研究のバックグラウンドの大切さ」
恐竜学博物館では標本だけを展示するのでなく、化石採集で実際に使っていたピッケルや、実物大の骨の展示物など、
「研究のバックグラウンドの大切さ」が伝わる展示をされていると感じました。
展示をする上で意識している点を教えて下さい。
石垣館長:
研究は成果だけでなく、それを生み出すまでのプロセスを伝える事が大切だと考えています。
当館の「強み」は、研究をする人たちがいて、その仕事の現場が至近距離で見られること。
そして学生が沢山いてくれることです。
この強みを生かして展示や活動をすれば、とてもユニークで、しかも深いものになります。
当館の展示物では、その後ろにあるバックグラウンドや、科学者の息吹や、そういったものが伝わるようにしたいです。
研究のプロセスやバックグラウンドは、研究結果を伝えるのと同じくらい大切なことです。
恐竜学博物館の「学」という字にはそういう思いも込められています。
恐竜博物館の今後の展望とは
一部の展示では実際の化石に触れて学べるコーナーもありました。
写真の様に、肉食恐竜の歯が生え変わる流れが分かりやすい展示が印象に残っています。
ただ見てまわるだけではなく、体感型の展示が意識的に散りばめられている点が恐竜博物館の大きな魅力だと感じました。
このような「伝わる展示」「研究のバックグラウンドを理解してもらえる工夫」の先には何があるのでしょうか?
石垣館長:
私たちが構築したいのは「理大恐竜学」です。岡山理大には、もともと様々な得意技があります。
面白い研究、素晴らしい研究をする先生が沢山いらっしゃる。
その先生方がやっていることと恐竜をつなげて一緒に研究を進めれば、今までにない方向への発展ができるわけです。
たとえば、生物化学の先生と化石に残った「DNA」「タンパク質」の研究をしたり、ロボット工学の先生と足跡の研究者が協力して恐竜の歩き方を研究したり。
物理化学系の先生とは、岩石の成分を調査して地層の年代を出すなど。
キャッチコピー的に言えば「オール理大で恐竜に挑もう!」という気持ちをもっています。
恐竜への多面的・学際的なアプローチで、岡山理大は日本の恐竜研究の一つの拠点となりつつあります。
より多くの方に知ってもらいたい恐竜のロマン
恐竜学博物館では、キャンパス内のいたるところに散りばめられた展示をめぐる「ぶら理大」という企画も最近スタート。
各スポットに解説が流れるQRコードがあるので、予備知識のない方でも楽しんでいただけること間違いなしですね。
恐竜学博物館を訪れて一番に感動したことは、「岡山市内にこんなにも贅沢な学びの場があったのか」という発見です。
日本ではここにしかない展示も多いく、是非とも沢山の方に恐竜のロマンに触れていただきたいと思います。
観光の中に「学びのエッセンス」を求めている方には特にオススメしたい場所です。
展示を隅から隅まで鑑賞するために、改めて時間をとってゆっくり巡りたいと感じました。
石垣館長:
当館は無料で入館可能ですから何度でもお越しください。
「大学」というと敷居が高いと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、興味をお持ちの方でしたらどなたでも気軽にきていただきたいです。
全部回るのにも1時間半程度でまわりやすいのではないでしょうか。
恐竜マニアや専門家の方だけでなく、学校団体や、小さなお子さま連れのご家族など、意外と多くの方に楽しんでいただいております。
ぜひ恐竜研究のロマンを求めている現場をご覧になってください。