アクセスがいい国道2号線沿いの「五穀蔵 岡山」
「キミセ醤油」は慶應2年に材木商として創業し、明治17年に醤油業に転業し今なお続く老舗の醤油メーカーです。今回伺った「五穀蔵 岡山」は、岡山市南区妹尾の国道2号線沿いにあり、全ての商品が取り扱われている直営店です。「キミセ醤油」では国産丸大豆・小麦に加え、きび、あわ・米を原料とする五穀醤油をベースとした調味料を麹から一貫生産し、化学調味料(アミノ酸など)・保存料は使用せず、本醸造での美味しさを追及しています。黄麹・黒麹・紅麹の3つの製麹を行える、国内ばかりでなく世界的にも珍しい会社です。
入り口には、大きな備前焼の甕(カメ)が飾られています。「この甕は2015年、瀬戸内市牛窓町寒風の備前焼作家森陶岳氏(重要無形文化財保持者)の窯で焼いた五石甕(ごこくがめ)です」と説明があります。
キミセ醤油では1994年から、備前焼の大甕で醤油を調熟する独自の製法である「備前焼大甕調熟」を取り入れています。備前焼の「水がくさらない、酒が芳醇になる」という特性を活かして、よりまろやかでコクのあるこだわりの醤油を作っています。
伝統的な製法で作られた醤油
「キミセ醤油」は大豆から醤油に至るまでの全ての工程を一貫して製造している県内ではほぼ唯一の醤油メーカーです。温暖な瀬戸内の気候を生かし、全ての素材に自然のものだけを使用した伝統の醤油製法を守り続けています。国内で製造される醤油の全生産量のうちわずか3%しか生産されていないとても希少な国産丸大豆を仕込み、醤油づくりを行っています。こちらの写真はもろみ蔵(本社)の様子。仕込んだもろみ(醸造工程においてできる複数の原料が発酵してできる柔らかいもの)をじっくり発酵・熟成させています。手前の四角い発酵タンクは、深さ3メートル、容量は木桶10個分の大きさがあり、このタンクが21個あります。500mlの醤油に換算すると年間200万本生産できます。背後に並んだ9個の備前焼大甕の中では(生醤油の)酵母が生きている間、搾りたて酵素が活性化し、より芳醇に熟成され、旨み、香り共に格別なものになっています。
ここでは「備前焼大甕調熟」と相乗効果の高い、美しい音(アルファ波が多いと言われるモーツァルトの音)を振動に換えて伝える独自の方法「音楽振動熟成方式」を導入しています。また世界的照明デザイナー・石井幹子氏監修の柔らかな光が備前焼大甕を照らし出し、幻想的な空間を作り出しています。
1994年備前焼の大甕5個からスタートした「備前焼大甕調熟」。さらに9個の大甕を設置し、最後の窯出しといわれた2015年の85メートル大窯の窯出し4個を含め、合計14個になりました。陶芸家森陶岳氏も大甕所蔵数では間違いなく日本一だとおっしゃっているそうです。
紙パックへの充填作業
「五穀蔵 岡山」では、醤油を紙パックに充填する工程を見学しました。ベルトコンベアで充填された醤油が次から次へと運ばれていきます。環境を配慮したSDGsの取り組みとして始まった紙パックは光を通しにくく、醤油を酸化させにくい特殊なものを使用しています。
見学は繁忙期以外で可能ですが、①本社のもろみ蔵と充填を外から見る ②五穀蔵の充填のみ ③①と②の両方見ることができ、いずれも無料ですが、要予約で時間などは応相談という形です。ご希望の方は一度お問い合わせしてみてください。
それぞれの商品は購入前に試食可能
店内には、多くの商品が並びますが看板商品である「五穀芳醇五穀しょうゆ」「五穀芳醇淡口しょうゆ」「まろやか醤油」「うすくち醤油」などそれぞれ食べ比べることができます。
定番のお醤油「まろやか醤油」をいただいてみました。その名のとおりまろやかでとても上品な味です。、「瀬戸内そだちだし醤油」「京風だし」「だしつゆ」の3点についても試食できます。公式ホームページには様々なレシピの紹介もあります。
健康と美容におすすめ「五黒まろやか酢」
2002年に岡山県、岡山大学医学部とキミセ醤油の共同開発により作られた「五黒まろやか酢」。五黒とは、黒大豆、ブルーベリー、黒酢、黒麹(白米)、黒米の五つの黒の素材のことです。実は、岡山県は黒大豆の生産が日本一でその健康効果に着目したそうです。
「五黒まろやか酢」は黒大豆の煮汁を加えて作られたクエン酸飲料で、クエン酸の酸味と米由来の甘味がバランス良く整っています。ポリフェノールもたっぷり。疲労回復にも良いそうです。更年期に悩む40代・50代の女性にもとても好評なのだとか。飲み方はそのまま飲んでもいいですし、ソーダー割り、ミルク割り、ホットワイン風などアレンジ自由。試飲コーナーではソーダー割り用の炭酸水がおいてあったので試してみました。自然の甘みと飲みやすい酸味がクセになりそうです。
スタッフ全員でおもてなし
「醤油づくりで大切にしていることは、お客様のかゆいところに手が届くサービスをすること。そのためには、実際に生の声を聴くことですね」と5代目社長の永原琢朗社長は話します。毎日スタッフから届くお客様の声の報告書には必ず目を通し、常に改善するべきところがないかどうか考えているそうです。イベントなどでは永原社長自ら店頭にたってお客さまとコミュニケーションもとっています。「やっぱりキミセさんの醤油が一番です、とお客様から言っていただけることが一番の励みになります」とにこやかにお話されました。
店舗では笑顔の素敵なスタッフさんたちが丁寧に商品の説明をしてくれます。
また、「五穀蔵 岡山」では土日祝のみ限定販売で五穀甘酒(非売品)を使ったソフトクリームの販売があります。ブルーベリーが実る季節には「ガーデン五穀蔵」で採れたブルーベリーのトッピングサービスを行っています。こちらもぜひお見逃しなく!