来館者・貸出数全国トップクラス! 岡山県立図書館の人気の秘密とは?

来館者・貸出数全国トップクラス! 岡山県立図書館の人気の秘密とは?
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日本図書館協会の集計によると、岡山県立図書館の来館者数・個人貸出冊数は、ともに全国トップクラス。2005年から17回も1位に輝くという驚くべき数字です。なぜ、岡山県立図書館に人が集まるのか。その秘密を探ってみました。

掲載日:2024年08月07日

ライター:観光ライター 頼實

人気を裏付ける3つの理由

岡山県立図書館は2004年9月に開館し、運営の方針となる基本的性格は「県民に開かれた図書館」「県域の中枢となる図書館」「調査・研究センターとしての図書館」「デジタルネットワークに対応する図書館」「資料保存センターとしての図書館」の5本柱。蔵書数は現在約160万冊で、都道府県レベルでみると、大阪府、東京都に続く全国3番目の多さです。

来館者・個人貸出冊数全国トップについて、総務・メディア課総括副参事の服部禎宣さんに聞きました。「3つの理由が考えられます。1つ目は蔵書数の多さ。2つ目は街中にあるアクセスの良さ。そして、3つ目は、手前味噌ではありますが、6部門に分かれた司書によるサービスです」と服部さん。
新刊図書は年間2万2000冊を購入。開館以来、児童書の全点購入を守り続けている点も特筆すべき点です。

自宅からインターネットで県立図書館の図書を予約し、最寄りの図書館で受け取れる便利なサービスも行っています。
県立図書館を中心に、市町村図書館や大学図書館など149施設と連携した図書館間のネットワークがあることで、それが可能になっています。
地下にある「図書館協力室」では、各図書館からの求めに応じて、貸し出す本を仕分け、定期的に運搬しています。

インターネット上の電子図書館「デジタル岡山大百科」にも注目を。
県内の図書館の資料を一括検索できる「岡山県図書館横断検索システム」、県民参加型でコンテンツを募る「郷土情報ネットワーク」、県立図書館に寄せられた調査相談の回答をデータベースにした「レファレンスデータベース」の3構成です。
「郷土情報ネットワーク」には、これまでに地域の古いお祭や校歌の音源などが寄せられたそうです。そのほか、和装本や絵図・古地図、カバヤ文庫なども閲覧することができます。

バックヤードツアーで図書館の“裏側”見学

「開かれた図書館」という構想通り、開館当初から、毎月第4土曜日(12月を除く)には「バックヤードツアー」を開催しています。夏休み中の子どもと一緒に体験してみました。
ツアーを担当する同館総務・メディア課の藤原葵さんは「普段は入ることができない書庫を巡る人気イベントです。予約不要で、所要時間は40分。夏休みと冬休みは開催日を増やしています」と話します。

藤原さんの案内によると、書庫の種類は、「固定書庫」「貴重書庫」「集密書庫」「自動化書庫」の4種類。ツアーでは4種類の書庫と「図書館協力室」などを回ります。
湿度50%、温度24度に設定された貴重書庫には、『備前軍記』など、岡山にまつわる歴史的な資料が収められています。最も古い資料は、1603年刊行の『太平記』。貴重書庫は、厳重に管理されていて、職員でも限られた人しか入れないといいます。

親子で楽しみにしていたのが「自動化書庫」の見学です。
省スペースや作業効率化を実現する自動化書庫の導入は、都道府県立図書館の中では、京都府立図書館に次いで全国で2番目だそう。
高さ約5メートル(建物2階分)の書庫内には、小説や文庫本、雑誌、新聞など40万冊が収納できます。
ラックの間を移動するスタッカークレーンと呼ばれる機械が素早く目当てのラックを運び、トロッコに乗せて館内カウンター裏へ直行。瞬く間に移動するので、目で追うのが一苦労でした。

「順番待ちを考慮すると、呼び出してから15分程度です。クレーンの動きがかっこいいと、特に子どもさんに人気です。ツアーは年齢制限はなく、コース内の撮影も自由にしていただけます」と藤原さん。
参加希望者は、開催日の13時半までに、2階デジタル情報シアター前に集合を。
夏休み中は、8月24日(土)以外に、8月10日(土)と8月12日(月・祝)にも開催。参加者にはオリジナル缶バッジのプレゼントもあります。

レファレンス力に自信あり!

図書館の人気を支える秘密の一つが、司書によるレファレンス(調べもののサポート業務)です。
資料は主題別に「人文科学資料」「社会科学資料」「郷土資料」など6部門と細かく分かれていて、カウンターも部門ごとに用意されています。図書の照会を希望する場合は、カウンター上の「レファレンスサービス」が目印です。
この日は、子どもの夏休みの宿題用に、「郷土資料」部門で、岡山の温羅(うら)伝説の資料を探してもらいました。

郷土資料班の司書・村上友佳子さんが用意してくれたのは、温羅伝説に関する4冊。「桃太郎の絵本は1階の児童資料にありますが、岡山に伝わる伝説や関連の史跡などの本は2階の郷土資料にあります。夏休みの自由研究などでも利用してください」と村上さん。
最近の印象深いレファレンス業務について伺うと、古い小学校の創立年についてで、過去の新聞から調査したのだそう。「デジタル岡山大百科」の「レファレンスデータベース」から、レファレンス事例の一部をみることができます。

司書の数は全体で約50人。それぞれの部門に分かれて、利用者のニーズに細やかに応えるために専門性を磨いています。
村上さんは、郷土資料部門で2年目。以前は、児童資料、自然科学・産業資料などを担当。「調べている中で、以前の部門での経験が生かせることもありますよ」と村上さん。
館内では、部門ごとに時事ネタに合わせた展示コーナーを設けています。全部で10ヶ所以上もあるそう。

取材したこの日は、今年創刊60周年を迎えた「岡山文庫」コーナーができていました。岡山県の文化や自然、人物など、さまざまな分野をマニアックに掘り下げる人気シリーズが勢揃い。利用者が選ぶ人気投票もありました。

開館当初から変わらない「児童書は全点購入」

開館以来、県立図書館は児童書の全点購入を行ってきました。児童資料コーナーの奥にある「児童図書研究室」では、月別に並んだ新刊児童図書を誰でも閲覧することができます。
児童書の全点購入は、リアルな書店が減少する中、県立図書館が大切にしていることの一つです。

「漫画やキャラクターものなどを除き、国内で出版された児童書を全点購入しています。実際に手に取って、本の中身を見ることができるので、学校の先生や図書館司書の方に選書の参考に利用していただいています」と服部さんは話します。

ふるさと納税や雑誌スポンサーなどの仕組みも

子どもの読書習慣の大切さを考え、貸出用の絵本や読み物などの購入に活用されているのが「ふるさと岡山応援寄付金」(岡山県へのふるさと納税)です。
このふるさと納税に返礼品はありませんが、本を通じて、子どもたちに読書の楽しさを伝えられる良いプレゼントになりそうです。

地域の企業が雑誌を広告媒体として利用できる「雑誌スポンサー制度」は2012年から取り組んでいます。現在スポンサーになっている企業や団体は30社、雑誌は84種類に上ります(6月時点)。
また、連携展示や講座なども数多く実施し、好評を博しています。
図書館自体がメディアとして情報発信。各企業や団体と密接に連携し、より充実したサービスを提供し続ける姿にも、人気の秘密を見たように思います。

岡山市公式観光情報 OKAYAMA KANKO.net