万富(まんとみ)特集(前編) 〜歴史的に重要な史跡と吉井川の恵みが育む自然と産業が調和した町~

万富(まんとみ)特集(前編) 〜歴史的に重要な史跡と吉井川の恵みが育む自然と産業が調和した町~
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自然 歴史・文化 鉄道 風景

万富は岡山市東区瀬戸町にあります。
歴史的に貴重な「東大寺瓦窯跡」、岡山県指定の天然記念物「宗堂桜」が有名です。
白桃の変わり品種「千種白鳳」やサクサクとした食感の柿「太秋柿」の生産が盛んで、吉井川の恵みが育んだキリンビール工場やお醤油、味噌などの老舗店が多くある地域です。小説家内田百閒ゆかりの三谷公園や曲がった鉄橋、登山者に人気の熊山など見どころがたくさんあります。
2022年に発足し、2023年4月よりボランティアガイドの活動を開始した「万の富を探す会」の皆さんのご協力のもと万富の魅力に迫ります。

掲載日:2025年01月07日 最終更新日:2025/01/06

ライター:観光ライター 梅緒

東大寺瓦窯跡

万富東大寺瓦窯跡はJR万富駅の北約400mにあります。
昭和2年(1927)に国の特別史跡に指定されました。

12世紀後半、奈良の東大寺は源平合戦で焼失しました。
東大寺大勧進職として東大寺の復興を任された俊乗房重源(しゅんじょうぼうちょうげん)は、かねてから親交があった岡山県出身の栄西禅師から情報を得ていた万富を瓦産地に選びます。万富は良い粘土が豊富で、燃料の薪もあり、水の豊かな吉井川流域で近くには船着き場もありました。もともと焼き物が盛んな土地でもありました。およそ十数年間で30〜40万枚の瓦が製造され、大仏殿、中門、回廊、南大門に使用されます。
東大寺の復興を任された重源亡きあとの東大寺再建は、栄西禅師が引き継ぎました。
遺跡の東側の斜面から窯跡が14基見つかっています
万富公民館に展示されている東大寺瓦は直径20cm、長さ45cm「大日如来」を示す梵字と「東大寺大仏殿」の文字が刻まれています。

東大寺瓦窯跡の入り口の看板は当時のようすを記しています、
北の高台にある阿保田神社は、瓦を焼く工事の安全と加護を受けるため、東大寺の守護神「手向山八幡宮」を勧請しました。重源は阿保田神社から寺山地区と上ノ山地区に広がる7000㎡の瓦製造現場を見守りました。
管理棟にも重源は出向いていたのではないでしょうか。管理棟の礎石は立派で高貴な人物が滞在したのではといわれています。
2024年冬から再開される発掘調査では管理棟や他の建物の調査もおこなわれます。
東大寺サミットは世界遺産「東大寺」の創建や大仏建立に関わった16自治体が持ち回りで開催しています。自治体の交流を深める東大寺サミットは2026年に岡山市での開催が決定しました。

守り伝えたいもの 宗堂桜 アユモドキ 

宗堂桜(そうどうさくら)

瀬戸町宗堂の地名から名づけられました。八重桜の一種で岡山県指定の天然記念物です。花弁が60枚くらいあり内側の20枚ほどは内側に向かって巻いて咲きます。
かつてこの地には、妙泉寺という日蓮宗不受不施派のお寺があり、徳の高い雲哲院日鏡というお坊さんがいました。農民からも慕われていましたが権力者には服従しなかったため、弾圧を受け命を落としてしまいます。それ以来、桜の内側の花びらが開ききらず咲くようになったといいます。
宗堂桜を他の地に移植しても、美しい色合いがでないそうです。ソメイヨシノが終わるころに咲き、そのふわふわとまるい可憐な姿はとても印象的です。

アユモドキ

ドジョウの仲間の淡水魚です。泳ぐ姿がアユに似ていることから名づけられました。
15〜20cm。絶滅危惧種IA類(環境省レッドリスト2013)
京都府亀岡市と岡山県の限られた場所にしか生息していません。国の天然記念物に指定されています。
万富では保護地を利用して自然繁殖事業をおこなっています。

地域の千種小学校5年生はアユモドキを人工繁殖させ、育てた稚魚を水族館に送りました。
また地元キリンビール工場のビオトープに試験放流をして保全活動に取り組んでいます。

熊山登山 ささやきの壁  

熊山は標高508mあり登山で人気の山です。
数多くある登山口のなかで瀬戸町弓削の「熊山 弓削コース」は、蛇行する吉井川や瀬戸内海を眺めながら、春の山桜、つつじ、新緑、秋の紅葉が楽しめ、年間を通して野鳥のさえずりが聞こえます。
8合目付近の経盛山からは北の那岐山、時には鳥取県の大山が見えることも。頂上付近には国指定史跡「熊山遺跡」、展望所等があり、小豆島、四国の屋島、讃岐山脈を望めます。

「ささやきの壁」は岡山市東区瀬戸町にある総合運動公園グランドのすぐ下にあります。
オーストラリアのパースにあるキングスパークにささやきの壁があり、こちらを参考につくられました。
放物線が作る効果によって壁の端でささやいた言葉が向こう側の端まではっきりと聞き取れます。
大切な人に想いをささやいてみては。知る人ぞ知る恋人たちの聖地です。

内田百閒と万富

内田百閒は岡山出身の小説家です。岡山市の酒造家の家に生まれ、代表作に「冥途」「百鬼園随筆」があります。
祖母に連れられて、よく三谷公園に来ました。

三谷公園は紅葉や桜の名所です。公園の入り口には金剛童子と呼ばれる社(やしろ)があります。
金剛童子は吉井川を渡る高瀬舟などの船の安全を守る神様でしたが、今は病気や子どもを守る神様として信仰されています。
猿を神の使いとする庚申信仰や日枝神様とも関係があることから社のうらには「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿が祀られています。

内田百閒は鉄道ファンでもありました。内田百閒全集の『春光山陽特別安房列車』で「曲がった鉄橋」として、万富の鉄橋が紹介されています。
曲がった鉄橋のベストショットを見に多くの鉄道ファンが訪れるスポットです。

万の富を探す会(ボランティアガイド)

今回の取材で万富を紹介してくださったのはボランティアガイド「万の富を探す会」の皆さんです。
万富の魅力を余すところなく案内してくださいました。

万の富を探す会は2022年にガイドになるための勉強がスタートし、現地研修や座学講習を受け最終試験に合格した25名のメンバーで構成されています。メンバーには子ども会員10名がいます。2023年4月から活動を開始しました。


万富公民館:086-953-0610
万の富を探す会:090-5975-0610

万の富のガイドを希望される場合はこちらまでご連絡ください。

万の富を探す会の活動の一つに紙芝居での万富の紹介があります。
練習を重ねた臨場感のある紙芝居には大人も子どもも引き込まれていきます。
三谷公園と宗堂桜の紙芝居があります。三谷公園の「もみじフェスタ」、宗堂桜の「宗堂さくらまつり」のイベントに参加して紙芝居も体験してみて下さい。

ボランティアガイド「万の富を探す会」の皆さんに導かれ、万富の魅力に触れることができました。
人があたたかく美味しいものがたくさんあり、美しい自然や壮大な歴史がある町です。
ボランティアガイドさんが魅力満載の万富を案内をしてくれますよ。
万富に出かけてみませんか。

岡山市公式観光情報 OKAYAMA KANKO.net