古墳大好き中学生・はにお君と歩く岡山の古墳(大崎古墳群)

古墳大好き中学生・板東郁仁さん(はにお君)と岡山の古墳を巡る第2弾。「古墳巡り(墳活)と巡礼が贅沢に楽しめる」という、はにお君のキャッチーな言葉に惹かれて、ミツバツツジの花が咲く時期に、少々マニアックな大崎古墳群(岡山市北区大崎の三上山一帯)を案内してもらいました。今回は備中高松駅(JR吉備線)からレンタサイクル「きびチャリ」で古墳群がある三上山の麓を目指しました。周辺は、古代から戦国時代まで立ち寄りスポットが点在する歴史好きにはたまらないエリアです。GWのお出掛け先候補にしてみてはいかがでしょうか。
掲載日:2025年05月01日 最終更新日:2025/04/30
ライター:観光ライター 頼實
吉備路日本遺産レンタサイクル「きびチャリ」で出発!
備中高松駅近くの「ウシダサイクル」で自転車を借りて、いざ出発です。電動自転車や子供用の24インチの自転車もあり、料金は1台2時間330円です(電動自転車は2時間660円)。
羽柴秀吉による水攻めで有名な備中高松城址横を直進し、集落の中に入っていきます。「大崎遍路道」という看板の次の曲がり角を北に向かい、しばらく、田園風景が見渡せる気持ちの良い平野のど真ん中を走ります。
途中、「大崎廃寺跡」近くには、素朴で温もりある表情の野仏・文英石仏があります。石仏マニアにはぜひ訪れてほしいポイントです。
今回目指す「大崎遍路道」とは、1800年代(江戸時代後期)に大崎八十八ヶ所霊場として開かれた信仰の場。古墳群の一部が石仏の安置場所として利用されているユニークな霊場です。
三上山を一周して、墳活と巡礼を一度に!
第一番札所は、正和池に向かう道の西側にあります(見過ごすかもしれません)。
「古墳は全体で77基ほど。そのうち道沿いにあった古墳24基が利用されています」。はにお君が大崎古墳群を訪れるのは約4年ぶり。前回は小学5年生の時で、著書「岡山100名墳」の中で5ページに渡って紹介しています。「前回、印象深かった“古墳のトンネル”が楽しみです」と、ウキウキした表情のはにお君。果たして、古墳のトンネルとは!?と期待が膨らみます。
正和池近くに自転車を停めて、第三番札所へ。
左が遍路道。右が行者道。どちらに進んでも一周回ってスタート地点に帰ってこられます(約4キロで、2時間〜3時間のコース)。遍路道を順番に進もうということで、今回は遍路道を選びました。(行者道は坂がきついので、どちらかというと健脚者向き)。
有志の方々が案内板の設置や草刈りなどの整備をされているようで、地域の人たちに愛されていることが分かります。
遍路道に、大型古墳が続々
ミツバツツジが咲く遍路道を登っていくと、開けた場所に到着しました。巨大な古墳の石室が見えます。
ここは、第十八番札所の「知足院古墳(大崎3号墳)」で、大崎古墳群最大の横穴式石室を持つ円墳です。中に入ると、石仏が安置されていました。奥壁や側壁、天井に巨石が使われていて、天井が非常に高く見応えがありました。
遍路道沿いには、大型の古墳が多くみられました。
筆者にとって、印象的だったのが第三十六番札所で、石仏の向こう側にある扉のような奥壁の存在感に釘付けになりました。上から自然光が差し込んでいるのも美しいと感じました。
左側壁が奥壁に対して直角である一方で、右側壁が少しカーブを描いているのも不思議でした。
石棺コレクション
遍路道を外れた薮の中に、はにお君が駆け上がります。「箱式石棺です。側に蓋石もあってわかりやすいです」。
箱式石棺とは、板石を箱状に組み合わせた石棺のこと。つい最近、石蓋を開けたばかりのような、フレッシュな印象を受けました。
こちらは、玄室の中に残されていた組合せ式石棺で、石仏と石棺が共存している珍しいパターンです。
また、大崎古墳群の大型の横穴式石室は、まぐさ石(出入り口の水平の石)が羨道の天井よりも一段下がっている場合が多いと教えてもらいました。
ついに“古墳トンネル”に到着!
山頂から下る行者道では、小型のものを中心に16基以上の古墳を見ることができます。年代が新しくなるにつれてより古墳がコンパクトになっていきます。「時代とともに、誰でも古墳を作れるようになったのかもしれません」とはにお君。
石仏が古墳で仲良く雨宿りしているような姿。雨風を避けてほしいという、江戸時代の信仰心を垣間見た気がしました。
小型の古墳が多い行者道の中では珍しく、第七十五番札所は大型の横穴式石室です。また、奥壁には磨崖仏が彫られていました。
磨崖仏はライトの照らし方を工夫すると、“映える写真”が撮れると教えてもらいました。「江戸時代にここに彫られたものだと思いますが、古墳が大切にされていると感じられて嬉しいです」と、はにお君が話してくれました。
はにお君が楽しみにしていた古墳のトンネルは、終盤の第八十番札所です。
なんとこの古墳は、行者道の正式な「道」で、山頂側にあった奥壁が取り除かれてトンネルとして利用されています。通行するには、この古墳を通るしか方法がありません。道マニアも必見です。
右側壁に石仏が祀られるというイレギュラーさ。はにお君のこの日一番の笑顔が見られました。
八十八ヶ所を全て参り、大崎古墳群を後にしました。
最後に、「もう1ヶ所おすすめの古墳があります」ということで、妙義山古墳(岡山市北区平山)にも立ち寄りました。少し離れた場所からでも、美しい丘陵が見えてきます。墳丘の上に大木が茂る美しい円墳。墳頂には祠があり、そこからの眺めも良かったです。最上稲荷からも近いので、ぜひ立ち寄ってみてください。
また、「きびチャリ」で日本遺産「桃太郎伝説の生まれたまちおかやま」のスポットを巡るのもオススメ!以下のリンクからチェックしてください。